「中国からの挑戦状」Y-8Q対潜哨戒機─【前編】機体解説

機体の特徴──P-3Cと互角の性能

MADブームやソノブイランチャー(ソノブイ投射器)に加え、大型のレドームを機首下方に装備したことから、胴体は大きく改修された。特に、輸送機型で見られた胴体の後部の大型の貨物用扉は廃止され、整形・延長されている。これは長距離・長時間の哨戒任務を考慮して抵抗を少しでも減少を図ろうとしたのかもしれない。

プロペラも、ロッキード(現ロッキード・マーティン)社のC-130Jに見られるような後退角付きの6枚のものが装備され、エンジン出力増強によって回転数が増加した分のパワー吸収とプロペラの抵抗の減少を図っている。

対潜器材の性能については明らかにされていないが、大型の対水上レーダーや、ソノブイ、MADブームと一通りの対潜哨戒機に必要なものを装備しており、中国国内の軍事誌などによると「P-3C相当」としているものが多い。

2020年10月3日、台湾南西のADIZ(防衛識別圏)に侵入し、台湾機により左斜め後方より撮影されたY-8Q(Photo:台湾国防部)[写真をクリックで拡大]

多くの哨戒機に見られるとおり、後部胴体側面には観測用のバブルウインドウ1が装備されたほか、前脚扉後方の機体下面にはEO(電子光学)/IR(赤外線)対応と推定される球状の光学センサーを有している。機体下面にはソノブイ運用およびESM2(電子支援策)用と推定される多数のブレードアンテナが装備されている。機体上面には矩形の平面アンテナ(初出の写真参照)が複数認められるが、GPSおよび衛星通信用であろう。

乗員はパイロット、航法士などの運航クルーのほか、10名程度の対潜クルーが機内に横向きに配置されたコンソール(操作卓)で任務に当たる。オペレーターごとのコンソールは同一の形状で、各席とも2画面のディスプレイとフルサイズのキーボードが設置されていることから、コンソールの標準化が進んでいるようだ。これはオープンアーキテクチャ3による開発に基づくものと思われ、Y-8ベースの他の作戦支援機の機内でも認められている。

横向きに配置されたコンソール(操作卓)に向かう乗員

脚注

  1. バブルウインドウ……下方を見やすいように、半球状に膨らんだ形の窓
  2. ESM……主として既知の敵のレーダー諸元などを探知・識別することにより、敵の戦力や装備などを特定し、味方の軍の状況判断などに貢献するための活動(情報収集機による通信情報や電子情報[SIGINT]を収集する偵察活動とは異なる)。Electronic Support Measures
  3. オープンアーキテクチャ……専用のハードウェアを設計するのではなく、構成品を汎用品として用い、ソフトウェアを任務に応じたものとする

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薗田浩毅元自衛隊情報専門官、軍事ライター、ネイリスト
(そのだ・ひろき)
1987年4月、航空自衛隊へ入隊(新隊員。現在の自衛官候補生)。所要の教育訓練の後、美保通信所等で勤務。 3等空曹へ昇任後、陸上自衛隊調査学校(現小平学校)に入校し、中国語を習得。
1997年に幹部候補生となり、幹部任官後は電子飛行測定隊にてYS-11EB型機のクルーや、防衛省情報本部にて情報専門官を務める。その他、空自作戦情報隊、航空支援集団司令部、西部および中部航空方面隊司令部にて勤務。2018年、退官。