“日本人が知らない”ナゴルノ・カラバフ戦争の無人機
トルコ・イスラエル製 vs. 国産+ロシアの技術

アゼルバイジャンの無人機──トルコやイスラエル製を駆使

まずは先手を打ったアゼルバイジャンの無人機事情から見ていこう。アゼルバイジャンの後ろ盾は同じチュルク系民族のトルコで、ドローン戦争の主役となっているのがトルコのバーカー社が開発したバイラクタルTB2無人機だ。

中高度・長時間対空型(MALE)に分類されるバイラクタル TB2無人戦闘機。バイラクタルとはトルコ語で「軍旗」などの意。トルコのバイカル社が開発したものだが、多くのパーツを国外製に頼っているとされる。初飛行は2014年(Photo:Baykar)

また、アルメニアはイランとの関係が良好なことから、イランと敵対するイスラエルがアゼルバイジャンに接近、1990年代末から兵器の提供を行なっている。その中にはイスラエル製の「神風」ドローン、IAIハロップも含まれており、そのほか、IAIサーチャーやヘロンTP、エルビット・ヘルメス450などの無人偵察機も導入されている。

徘徊型の先駆けであるIAI ハーピー無人攻撃機の大型版としてイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ(IAI)が2000年代に開発したIAI ハロップ(またはハーピー2とも)。人間が遠隔操作することもできるが、敵の上空を徘徊させ、レーダー派を捉えたら突っ込こせるといった完全自律型の運用もできる。ステルス性を備え、IAIのサイトによるとレーダー反射断面積(RCS)は0.5未満とされる(Photo:IAI)
ランチャーを積んだトラック車輌から発射されるIAI ハロップ(Photo:IAI)

これらはバイラクタルTB2のような兵器搭載能力はないが、イスラエル製の高性能電子光学/赤外線センサーにより監視、偵察を行なうほか、レーザー誘導兵器のために目標を照射するターゲティングにも使われている。

ハロップは敵地上空でロイター(滞空)し、レーダー波など探知するとその方向に突っ込んでいく自爆ドローン。「ロイター」には「滞空」のほか「徘徊」という意味もあり、「徘徊兵器」と訳す資料もあるが、こちらの方が実態に近いかもしれない。

IAIが1980年代後半に開発し、1990年代から運用されている無人偵察機IAI サーチャー。イスラエル空軍をはじめ、ロシアやスペイン、韓国、トルコなど多数の国で運用されている。写真は最新型のMk.IIIのもの(Photo:IAI)
IAIが1990年代に開発し、2000年代から運用されている無人偵察機IAI ヘロンTP。中高度・長時間対空型(MALE)に分類される。多数の国で採用され、「朝日新聞」2016年6月30日の記事によると、日本もこの機体をベースに無人偵察機をイスラエルと共同開発する案があったとされる(Illustration:IAI)
イスラエルのエルビット・システムズが開発し、1990年代末から運用が始まった無人偵察機ヘルメス450。偵察だけでなく、ELINT(電子情報収集)やCOMINT(通信情報収集)にも用いられる。写真はアメリカ合衆国税関・国境警備局(U.S. CBP)が運用する機体(Photo:U.S. CBP)

アゼルバイジャンのドローン戦力の中核はバイラクタルTB2で、翼幅12m、全長6.5m、最大離陸重量650kgとプレデターよりひとまわり小さい。それでも高度6,500m以上を時速250kmで飛行、最大27時間滞空できる能力を持つ。エンジンは100hpのガソリン内燃式で、胴体後部のプロペラを回すプッシャー(推進)方式だ。

プッシャー無人機の多くは細い胴体をプロペラ後方まで延ばす双胴構造が多く、バイラクタルTB2の場合は垂直/水平尾翼を兼ねた「逆V」尾翼で左右の胴体を繋いでいる。引き込み式の前脚後方にはL3ハリス・ウェスカム製のCMX-15Dマルチスペクトルカメラ・システムが搭載されており、レーザー誘導兵器のターゲティングに使える。

 

主翼下面には左右2ヵ所ずつ、4ヵ所のハードポイントがあって、それぞれにミズラックU UMTAS(長射程対戦車ミサイル)を1発ずつ搭載できる。ミズラックUには画像赤外線誘導とレーザー誘導の2種類があって、最大射程は8,000m。

このミサイルでアルツァフの国防大臣暗殺作戦が実施されたという情報もあり、ウェスカムCMX-15Dとトルコに提供しているカナダが輸出を制限する動きが出ている。トルコ製といってもほとんどが国外製の技術で、アゼルバイジャンは既受領分だけで戦う必要があるかもしれない。

Twitterにアップされている、アルツァフの国防大臣をアゼルバイジャンのTB2が爆撃して暗殺したとアゼルバイジャン国防省が主張している動画

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