アゼルバイジャンの無人機──トルコやイスラエル製を駆使
まずは先手を打ったアゼルバイジャンの無人機事情から見ていこう。アゼルバイジャンの後ろ盾は同じチュルク系民族のトルコで、ドローン戦争の主役となっているのがトルコのバーカー社が開発したバイラクタルTB2無人機だ。
また、アルメニアはイランとの関係が良好なことから、イランと敵対するイスラエルがアゼルバイジャンに接近、1990年代末から兵器の提供を行なっている。その中にはイスラエル製の「神風」ドローン、IAIハロップも含まれており、そのほか、IAIサーチャーやヘロンTP、エルビット・ヘルメス450などの無人偵察機も導入されている。
これらはバイラクタルTB2のような兵器搭載能力はないが、イスラエル製の高性能電子光学/赤外線センサーにより監視、偵察を行なうほか、レーザー誘導兵器のために目標を照射するターゲティングにも使われている。
ハロップは敵地上空でロイター(滞空)し、レーダー波など探知するとその方向に突っ込んでいく自爆ドローン。「ロイター」には「滞空」のほか「徘徊」という意味もあり、「徘徊兵器」と訳す資料もあるが、こちらの方が実態に近いかもしれない。
アゼルバイジャンのドローン戦力の中核はバイラクタルTB2で、翼幅12m、全長6.5m、最大離陸重量650kgとプレデターよりひとまわり小さい。それでも高度6,500m以上を時速250kmで飛行、最大27時間滞空できる能力を持つ。エンジンは100hpのガソリン内燃式で、胴体後部のプロペラを回すプッシャー(推進)方式だ。
プッシャー無人機の多くは細い胴体をプロペラ後方まで延ばす双胴構造が多く、バイラクタルTB2の場合は垂直/水平尾翼を兼ねた「逆V」尾翼で左右の胴体を繋いでいる。引き込み式の前脚後方にはL3ハリス・ウェスカム製のCMX-15Dマルチスペクトルカメラ・システムが搭載されており、レーザー誘導兵器のターゲティングに使える。
主翼下面には左右2ヵ所ずつ、4ヵ所のハードポイントがあって、それぞれにミズラックU UMTAS(長射程対戦車ミサイル)を1発ずつ搭載できる。ミズラックUには画像赤外線誘導とレーザー誘導の2種類があって、最大射程は8,000m。
このミサイルでアルツァフの国防大臣暗殺作戦が実施されたという情報もあり、ウェスカムCMX-15Dとトルコに提供しているカナダが輸出を制限する動きが出ている。トルコ製といってもほとんどが国外製の技術で、アゼルバイジャンは既受領分だけで戦う必要があるかもしれない。
#BREAKING:#Azerbaijan Ministry of Defense released this footage now.They claim that the Minister of Defense of #Atsakh Republic is assassinated by them successfully an hour ago!If true, then #Turkish Bayraktar TB2 drones are now in use for assassination of #Armenia's politicians! pic.twitter.com/tUzeWRoGVP
— Babak Taghvaee - The Crisis Watch (@BabakTaghvaee1) October 27, 2020
Twitterにアップされている、アルツァフの国防大臣をアゼルバイジャンのTB2が爆撃して暗殺したとアゼルバイジャン国防省が主張している動画
コメントを残す