“日本人が知らない”ナゴルノ・カラバフ戦争の無人機
トルコ・イスラエル製 vs. 国産+ロシアの技術

アルメニアの無人機──ロシアの援助で国産機も開発

石油産出国のアゼルバイジャンは基本的には農業国だが、アルメニアは鉱工業やIT産業が進んでおり、ロシアからの技術提供もあって国産ドローンの開発に成功している。国内の軍需工場では現在、3種類の無人機が開発、製造しており、後継機の開発も進んでいる。

3種類は大きい順にクルンク、X-55、そしてフレーシュで、今回の紛争に間に合ったかどうかは不明だが、ビーブ1800/3000/3200が開発されている。クルンク(アルメニア語で「鶴」)とX-55はそれぞれ重量60kgと50kgで、最長でも5時間程度の滞空時間しかない。兵装搭載もできないため、主に監視、偵察任務に使用されている。

アルメニア共和国軍が開発したクルンク無人偵察機。初飛行は2011年とされ、同年のアルメニア独立20周年を記念した軍事パレードで初めて公表された(Photo:Jonj7490)
アルメニア共和国軍が開発したX-55無人機。2015年にアルメニアの防衛産業展示会で初めて公表された(Photo:Jonj7490)

興味深いのがフレーシュ(アルメニア語で「怪物」)で、十字翼の限りなくミサイルに近い兵器で、ハロップほどの滞空時間はないが、プロペラ推進で徘徊飛行、目標を探知すると突入する自爆兵器だ。

Armenian new UAV s BEEB-1800, BEEB-3000, BEEB-3200, S-1 and HREESH
Բազմաֆունկցիոնալ հայկական նոր ԱԹՍ-ներ, որոնք բոլորն էլ անցել են փորձարկումներ։

Արծրուն Հովհաննիսյանさんの投稿 2018年3月29日木曜日

アルメニア国防省の元報道官Artsrun Hovhannisyan氏がFacebookで公開した、アルメニアのProMAQ社が開発し、同国で運用されている無人機。フレーシュ(右列の下)、ビーブ1800(右列の中央)、ビーブ3000(右列の上)、ビーブ3200(左列の上下)[右上のFacebookのロゴボタン「f」を押すとリンク先のページへ移動できます]

このフレーシュの後継となるのがビーブ1800で、単なる自爆兵器ではなく、偵察機材と弾頭を付け替えることで、多用途に運用できる。

 

クルンクやX-55を代替というより補完するのがビーブ3000で、大きな台形翼の下面に赤外線センサーを搭載している。開発中の機体で性能諸元は明らかでないが、センサーとの比率で見るとクルンクよりは小型で、降着装置もない。エンジンは機首にあるので、ヘリコプターのホバリングのように機首を上に向け、大きな迎え角で失速状態のまま落下する、「ディープストール・ランディング」方式で運用される可能性が高い。

アルメニアにはバイラクタルTB2に対抗できる兵装可能な無人機はまだないが、ウエポンベイを設けてその中に対戦車ミサイルなどを搭載しようと考えたのはビーブ3200で、無尾翼で翼幅の大きい三角翼機の模型が展示されている。

Armenian new UAV «UL-200 »

Արծրուն Հովհաննիսյանさんの投稿 2018年3月29日木曜日

同じくArtsrun Hovhannisyan氏のFacebook上で紹介されたProMAQ社のビーブ3200無人機。機体上部にコクピットのような黒い部分があるのがビーブ3200で、板のような機体がビーブ3000[右上のFacebookのロゴボタン「f」を押すとリンク先のページへ移動できます]

ビーブ3200はプロパラ推進だが、小型ジェット推進でステルス形状のS-1という試験機も開発中で、この紛争が長引けば、これらの次世代無人攻撃機が戦場にデビューするかもしれない。

Armenian new UAV

Արծրուն Հովհաննիսյանさんの投稿 2018年3月29日木曜日

同じくArtsrun Hovhannisyan氏のFacebook上で紹介されたProMAQ社のS-1無人機[右上のFacebookのロゴボタン「f」を押すとリンク先のページへ移動できます]

編集部がWikipediaやメーカーのホームページを参考に作成[クリックで拡大可]

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ABOUT US
石川潤一航空評論家
(いしかわ・じゅんいち)
1954年東京生まれ。立正大学地理学科卒。
雑誌「航空ファン」編集部をへて1985年にフリーに。
航空・軍事雑誌の記事、著書、訳書多数。