F-22&F-15との比較で見る F-35の制空力

vs. F-15──武装や上昇性能は見劣りするが、他は圧倒的

F-15Jは最大速度マッハ2.5で、現用の戦闘機としては最速の部類に入り、中射程のAAM-4、短射程のAAM-5空対空ミサイルをそれぞれ4発づつ搭載できる。これに対してF-35Aはマッハ1.6で、単発エンジン機のため上昇性能もF-15Jと比べると見劣りする。また、空対空ミサイルもステルスモードではAIM-120C AMRAAM中射程空対空ミサイル 4発と兵装面でも非力だ。

反面、APG-81 AESA(アクティブ電子スキャンドアレイ)レーダーは現用火器管制レーダーとしてはトップクラスの性能で、さらには全方位を監視できるAAQ-37 EO-DAS(電子光学分散開口システム)と赤外線やレーザーで敵機を追尾できるAAQ-40 EOTS(電子光学ターゲティング・システム)という最先端の電子光学センサーを備えている。

これは米空軍最強の戦闘機、F-22Aラプターをも凌ぐ能力で、ステルス性を生かして敵の防空網をかいくぐって空対空、空対地戦闘だけでなく、友軍のための情報収集を実行できる。さらに、得られた情報を編隊僚機に迅速に伝達できるMADL(多機能新型データリンク)はステルス環境下でも使える。

F-15JSIとして大改修が施されるF-15J

F-15Jの側も段階的な改修は施しているが、ネットワーク戦全盛の現代の航空戦において、飛行性能だけでは通用しなくなっていることは確かで、大改修によってレーダーをAESA化し、「空飛ぶスーパーコンピュータ」と呼ばれる最新鋭のミッションコンピュータを搭載、データリンクや電子戦システムを換装する計画が進んでいる。

メーカーのボーイングではこの改良型をF-15JSI、「ジャパニーズ・スーパーインターセプター」と呼んでいるが、米空軍が導入する最新型、F-15EXに限りなく近い仕様で、AGM-158B JASSM-ER(統合空対地スタンドオフ・ミサイル射程延長型)やその対艦型AGM-158C LRASM(長射程空対艦ミサイル)の運用能力を持たせる計画だ。

ボーイングが公表したF-15JSIのイメージCG。胴体下面には、ロッキード・マーティン社が開発したAGM-158B JASSM-ERを翼を折り畳んだ状態で搭載しているのが分かる(Illustration:Boeing)

また、空対空ミサイルの搭載数も増やす計画で、F-35Aと直に、あるいはE-2Dアドバンスド・ホークアイ早期警戒管制機を介してデータリンクで結べば、敵防空網の外側からリモートで空対空ミサイルを発射する、ミサイルキャリアとしての使い方も可能になるだろう。

つまり、F-35AとF-15JSIはライバルというより互いの長所を生かして補完しあう存在で、その能力を生かせるかどうか、運用側の手腕が試されることになる。F-35Aの長所はなんといってもステルス性で、例えばRCS(レーダー反射断面積)の大きいF-15に紛れてしまえば、RCSの違いで敵のレーダーオペレータはF-35を見逃す可能性が高く、接近するまで探知することは難しい。

そして、F-35Aが防空網に穴を開ければ、F-15はそこから侵入して速度、上昇、加速などの飛行性能の高さや搭載能力を生かして戦うことができる。また、F-35A自身もステルスモードからビースト(野獣)モードに切り替え、AMRAAM 14発、AIM-9Xサイドワインダー 2発の計16発のミサイルキャリアとしての運用も可能だ。

前述したようにステルスモードの際には、左右のウエポンベイにAMRAAMを2発ずつ、計4発しか搭載できないが、これを6発搭載可能な「サイドキック」改修が予定されている。また、現在レイセオン社が開発中のサイズ1/2の小型空対空ミサイル、「ペリグリン」が実用化すれば、ウエポンベイドアに2発の搭載が可能となって8発まで増える。

ロッキード・マーティン社は詳細を公表していないが、サイドキック(Sidekick)という装置によって、ウェポンベイに変更を加えることなく、AIM-120を左右で1発ずつ増やすことができる。なお、サイドキックはC型にも取り付け可能だが、サイズが小さいB型には取り付けられない[右上のTwitterアイコンを押すとこのツイートへ移動します]

レイセオン社が開発している新型空対空ミサイル「ペリグリン(Peregrine)」。AIM-120(全長3.65メートル)やAIM-9X(全長3.02メートル)のおよそ半分のサイズと重量ながら、より長い射程をもつとレイセオン社は主張している(Illustration:Raytheon)

しかもステルスモードでは空気抵抗が増えることはなく、マッハ1.6の最大速度がいつでも出せるため、飛行性能面でも他の戦闘機に引けは取らない。

空戦においては、ステルスモードのF-35Aはミサイルや増槽を外部搭載するF-15J(後述のF-15JSI)より明らかに優位で、運動性もF-16並みあるいはそれ以上とされるので、格闘戦においても十分太刀打ちできるはずだ。

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石川潤一航空評論家
(いしかわ・じゅんいち)
1954年東京生まれ。立正大学地理学科卒。
雑誌「航空ファン」編集部をへて1985年にフリーに。
航空・軍事雑誌の記事、著書、訳書多数。