次世代エンジンが米空軍をどう変えるか【米空軍のエンジン最新事情3/3】

《フェイズ3》既存の第四世代機への応用

3つ目の取り組みは、アダプティブエンジン関連技術を、従来の航空機部隊に適用する可能性ついて探るものだ。

条件が合えば、もしかしたら全部のエンジンの置き換えがあるかもしれないが、アメリカ空軍の担当者によると、その可能性は低いという。よりありそうなことは、おそらくF119や、F100、F110のような既存のエンジンの改良のようだ。

これらの既存のエンジンの一部が、置き換えられたり、アダプティブエンジン開発で得た技術や経験、素材などを取り込めるかどうかの調査・研究が行なわれることになる。

既存の第四世代機にアダプティブエンジンが採用される可能性より、たとえばアダプティブ技術の鍵となるような、最新の熱交換システムや耐熱素材が、第四世代機のエンジンにも転用される可能性のほうが高い。

今日では、第四世代機の多くにも追加のミッション・システムを組み込む方法が検討されている。このようなミッション・システムは、追加の電力や熱管理が必要になるが、アダプティブエンジン開発の経験で得られた技術を応用することで対応できる可能性があるという。


レーザー兵器を実現可能にする!?

ロッキード社は、2025年までに戦術戦闘機にレーザーを搭載するための取り組みをしているところだ(「Breaking Defense」2020年9月17日付)。米空軍研究所のSHiELD計画は、自己防衛用のレーザーポッドを戦術戦闘機に装備することを目指すものだ。これは、こちらに向かってくる敵の対空ミサイルから戦闘機自身を守ろうとするものである。

攻撃用のレーザーで敵の航空機を撃墜するような方法は、目標の距離が遠いので、より大きなレーザーの出力が必要になり、命中させることでもまだ大きな課題が残っている。そのため、攻撃用レーザーはまだ先の話になる。

ロッキード社の公開映像では、F-16のような第四世代機がSHiELDポッドを装備して使用を想定していた。加えて第六世代機に装備する構想も語られている。

機体下に取り付けたレーザーポッドからレーザーを照射しているF-16のイメージイラスト。追加のミッション・システムとしてロッキード・マーティンによって開発されている(Illustration:Lockheed Martin)

ただ、空を飛ぶ航空機は陸上の車両よりも制約が多い。戦闘機は時速何百キロ以上で飛行するが、車両の移動速度ははるかに遅い。車両は、状況によっては地面の上で止まることもでき、安定しているので狙いをつけるのが戦闘機らよりはるかに簡単だ。しかも電力の供給と冷却面でも、地上の車両のほうが制約が少ない。

そのため、ロッキード社は、まず最初にこのようなレーザー兵器は、米陸軍の車両に搭載する意向だ。陸軍のIFPC-HELは出力300kWなのにたいして、空軍のSHIELDの出力は現在未定だが、新しい発電システムの追加なしには、おそらく100kW以下になると見込まれている。より高い発電能力と冷却能力を持つ航空機用エンジンが必要とされている。

米陸軍の車載IFPCエナジー・レーザー(IFPC Energy Laser)は、ロケット弾やドローン、亜音速巡航ミサイルに対応しようとするものだ。車載IFPC-HEL(High Energy Laser)は、2024年に運用される予定になっている。これは、ロッキードが戦闘機にレーザーを搭載しようとしている時期より1年早い。

アメリカのダイネティクス社が開発しているレーザー兵器 IFPC-HEL(Indirect Fires Protection Capability-High Energy Laser)のイメージイラスト。300キロワットのレーザーによって砲撃を迎撃する(Illustration:Dynetics)

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