次世代エンジンが米空軍をどう変えるか【米空軍のエンジン最新事情3/3】

米空軍が示唆した機体はおそらく「技術実証機」

「われわれはすでに、現実世界で実物大の「飛行実証機(flight demonstrator)」を製造し、飛ばしている。そして記録を破った」と、ウィルローパー空軍次官補が2020年9月14日にオンラインで行なわれたアメリカ空軍協会の「航空・宇宙・サイバー・シンポジウム2020」で言った。この『飛行実証機』という言葉を、特定機種のプロトタイプであると解釈している記事は少なくない。

しかし、「The National Interest」(2020年9月16日付)では、以下のように書かれている「ローパーは、プロトタイプでない種類の航空機だと示唆しており、空軍がいつでもデジタルセンチュリーシリーズ計画を実行して、これまでになかった方法で次世代機をつくることができることを強調した」。

「飛行実証機」について具体的なことは何も公開されていない。製造したメーカーも分からず、有人か無人かさえ分からない。

アメリカ空軍研究所が2018年に次世代戦闘機のコンセプトとして公開したイラスト(ウィルローパー空軍次官補が話した機体とは直接関係がない)(Illustration:アメリカ空軍研究所)

これまで、特定機種のプロトタイプではないステルス機の技術実証機や実験機には、ノースロップ社の「タシット・ブルー」やボーイング社の「バード・オブ・プレイ」などがあった。ローパーが提示している開発スケジュールのサンプルを考えると、今回の「飛行実証機」とは、特定新型機種のプロトタイプではなく、技術実証機である可能性が高い。

その場合、一つの可能性として、デジタルセンチュリーシリーズでたびたび取り上げられているデジタルエンジニアリングを使用し、短期間で実際に飛行できる機体が製造できることを実証するための機体だったのではないか、と推測できる。今回のローパーの飛行実証機も既存のエンジンが使われているだろうから、エンジンが影響する性能は、従来機に準じたものになっただろう。



F-117は、当初その存在が公開されず秘密裏に運用されていたが、エンジンは従来機のものであることに変わりはなかった。そのためF-117はステルス機特有の形状の制限から、むしろ速度や運動性能は従来機より劣っていた。

以上、エンジンは戦闘航空機の性能を決めるのに重要な役割を占めており、短期間で飛躍的に高性能なものを開発することができないので、そこから見えてくるものもある。今後も、アメリカの最新軍用航空機エンジン開発については、他国の軍関係者をふくめ、多くの人々が注目していくだろう。

 

参考資料

「Aviation Week」2020年6月15-28日、2020年7月27日-8月16日、2020年9月14-27日の各号
「Flight International」2019年8月6日号
「Air International」2019年4月号



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