第2回 音速を超えてからの加速テクニック

F-15ならABなしでも音速を超える!

さて、ついにマッハ1.7程度まできました。F-4ではこの辺が限界でしょう。数字上ではこれ以上の加速も可能ですが、ここまで加速すると日本では飛行場まで帰る燃料がありません。

米国ならば砂漠の真ん中の、真下に滑走路があるような場所ならば、燃料を気にしなくてどんどん加速すればいいのですがね~。日本ではそうはいきません。

超音速飛行は地上に影響を与えないように、日本国土から100マイル(185キロ)以上離れた海上で実施するので、そこから基地に帰るためにそれなりの燃料を残さなければいけないからです。

ABなしで音速突破もできるほど大推力の双発エンジンをもつF-15イーグル。かつては数々の高度への到達時間記録ももっていた(Photo:航空自衛隊ホームページ)

これより先まで加速するには飛行機を乗り換えた方が無難です。F-15でさらに加速しましょう。

ちなみにF-15がクリーン(外装物なし)状態であれば、4万フィート(1万2,192メートル)・MILパワーで普通に音速を超えます。音速を超えたままを維持することはできませんが、音速前後を行ったり来たりします。

そんな状態でAB(アフターバーナー)を着火すれば、どんどん加速してあっという間にマッハ1.8程度まで加速していきます。私の個人的経験ではマッハ2.0までは加速できましたが、ここまでくると、ギシギシという音と、なんか異様な臭いで不安が一杯(!)になります。

そして、やっぱり止めようという気になって、アフターバーナーを切ることになります(笑)。

しかしアフターバーナーを切れば終わり、とはいかないのが超音速飛行です。ここで迷いが生じると、帰る燃料が足りなくなってしまいます。
続きは次回!

連載「F-2テストパイロットが教える 戦闘機パイロットの世界2」第2回─終─

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

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渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。