マッハ1.5だとほぼ直線にしか飛べない
ここで、超音速飛行そのものについてご説明しておきたいと思います。音速以上を出すことは、パイロットにとってはあまり意味を見出すことができない機動です。なぜならば超音速飛行では飛行機が自由に動いてくれないからです。
戦闘機はマッハ0.9ぐらいが一番元気です。思うように自由にグリングリン動きます。まあ、パイロットはきついのですがね(笑)。
しかし超音速飛行では、加速すればするほど飛行機の操縦は重くなって飛行機は動かなくなります。マッハ1.5以上では、ほとんど直線飛行しかできません。なんのためにぶっ飛ばしているのかって聞かれても、特に必要性を語れるほど理由が見つかりません。
その上、冒頭で説明したように膨大な量の燃料が消費されます。飛行機自体も多くの運用制限が加わり、空中戦どころではなくなります。しいて言えば、戦域から離脱するときは逃げ足が速い方が有利ですので役立つかも知れませんね。
また、私は試験飛行を行なうことが仕事であったので、日常的に超音速飛行して飛行機の限界確認などをしていましたが、航空自衛隊の一般の戦闘機運用パイロットは、不本意に音速を超えてしまうことがある程度で、たぶん自分の意志で音速を超える操舵はしていないと思います(通常任務で超音速飛行は百害あって一利なしです!)。
ましてマッハ2程度までの加速は空域の制限もあり、日本国内では数名が経験しているだけでしょう。次回からは、試験飛行についてお話をしましょう。
連載「F-2テストパイロットが教える 戦闘機パイロットの世界2」第3回─終─
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