第6回 テストパイロットの1日
──試験飛行の見積もりが3倍になる理由が分かる??

操縦技術が求められる編隊集合

少し試験が進んで離陸自体の安全性が確認できれば、チェイス機は自衛隊基地から上がって、試験機が離陸する飛行場上空で(試験機と)合流します。言葉では簡単ですが、実際に離陸機に対して離陸直後に、随伴位置へジョインナップ(join up:編隊集合)するにはそこそこの技術が必要です。

初飛行を行なった際のMRJと、それに随伴する3機のチェイス機。2機のMU-300(三菱重工とその子会社のDASの社有機)が主なチェイス機としてそれぞれの別の任務を行ない、(MU-300では速度的に苦しいため)安全支援のために航空自衛隊のT-4が応援に駆けつけた形となった(画像:YouTube「MitsubishiAircraft」より)[画像クリックで動画へ移動できます]

例えばMRJの初飛行のときにチェイスを行なった2機のMU-300(1機は派生型)を見ればよく分かります。1機のMU-300には民間パイロット、もう1機には元TPC(飛行開発実験団)出身の戦闘機乗りが操縦していました。

MU-300はMRJ離陸後、速やかにジョインナップしてチェイスポジションへ移行する必要がありましたが、1回目の旋回後ただちにジョインナップできたのはTPC出身者の機体のみでした。民間機出身のパイロットは編隊飛行をする機会もなかったと思うのでしょうがないですが、これを見ても離陸直後の飛行機へのジョインナップにはそれなりの技術が必要なのです。

また、チェイス機は試験機の監視や支援をしますので、その日の試験内容は完全に理解しておく必要があります。そのため、数日前から方案に対する理解度を上げておく必要があります。

渡邉吉之・著
『戦闘機パイロットの世界
“元F-2テストパイロット”が語る戦闘機論

飛行時の体感から、計器・HUDの見方、エンジンスタートから着陸までの手順、空戦やマニューバー、失速や緊急時の対応方法まで!

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渡邉吉之元航空自衛隊パイロット、テストパイロット
(わたなべ・よしゆき)
1951年東京都生まれ。防衛大学校を経て航空自衛隊へ入隊。第8航空団(築城基地)でF-4EJ、飛行開発実験団(岐阜基地)でF-15J戦闘機などのテストパイロットとして勤務。操縦経験機種は各種戦闘機のほか、グライダー、軽飛行機、練習機、大型輸送機、ヘリコプターなど30機種におよぶ。
1990年、F-2支援戦闘機の開発のために三菱重工業に移籍。新製機や修理機のテストフライトを担当し、設計の改善等をアドバイスする。1995年、F-2の初フライトを成功させる。その後、同社の戦闘機の生産拠点である小牧南工場の工場長などを務める。
著書に『戦闘機パイロットの世界』(パンダ・パブリッシング)、共著に『零戦神話の虚像と真実』(宝島社)がある。