【帰投後】試験飛行期間の見積もりが、実際には3倍になる理由
実際の飛行試験の内容については別の機会にして、1時間半程度試行して試験を終了し、無事に着陸できたとします。ここからが大変な量の仕事が待っています。
着陸したらすぐにディブリーフィングが始まります。まずは飛行機の状況を整備と技術者に伝えます。
戦闘機は極めて複雑な機械です。ですから飛べば何かの不適合が出ます。特に試験機は初めての機材を搭載していたりするので、機体そのものの不具合か、もしくは新たに搭載した機材の影響なのかを判定しなくてはいけません。
これを間違えると膨大な無駄な時間と作業が発生します。ですから技術者も飛行機の「アウト」(飛行機の故障)と思わずに、すべての不具合が自分の担当している部位の影響ではないか? と考える必要があります。
今の飛行機は、機体に電源が入った瞬間から、エンジンを停止させてメインスイッチを切るまで、すべてのデータが記録されます。そのため、この膨大なデータの中から不具合が起こった瞬間を見つけ出して、その付近のデータをすべて分析しなくてはいけません。
つけ加えれば、飛行機の整備員は細部に分かれており、技術者(設計者)はさらにもっと細分化されています。なので相手を間違えると、まったく理解してもらえない可能性があります。極端なことを言えば、無線機がアウトだとして、伝える相手がVHF担当か、UHF担当か、もしくはHF担当かで、故障が直るかどうかが決まってしまうことがあるので、誰にどう伝えるかも重要となります。
原因が分からない場合、試験飛行はすべて待機に!?
まあ、この作業はその道の専門家(その機材を設計した技術者)がやりますが、結果が出るのは夜遅くとなって、その後さらなる細部をテストパイロットに聞いてくるので、飛行試験終了後は、飛ぶ前に必要とした時間よりもはるかに多くの時間を費やします。もしそれなりの原因がつかめなくて改修できなかった場合は、その後の試験飛行はすべてスタンバイ(待機)となってしまいます。
ですから、飛行機を開発するときの試験飛行期間の見積もりは、技術者が最初に言ってくる期間の3倍程度になると思っていいと思います。
一般的な会社でこのようなことをしていたら会社がつぶれてしまいますが、飛行機開発の場合、もし不具合を妥協して飛ばして事故でも起こしたら、生命にかかわるのはもちろん、プロジェクトそのものが中止となって、それまで積み上げてきた時間や費用が無駄になってしまいます。
ちなみに、今は「不具合」とは言わずに、なぜか「不適合」と言います。「不具合」だとダメなイメージですが、「不適合」だと基準に合ってない程度で、そんなにヤバイ感じはしないですからね!(笑)
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