その後、外部点検へ──右回りで確認していく
コクピット点検が終わったら、次に外部点検に入ります。
皆様も車を運転するときは、法律で定められているので運行前点検をされるでしょう? まあ、今の法律では毎回ではなく適宜となっていますので、適宜でいいのですがね!
実は飛行機も、最近は飛行機によっては外部点検を含む飛行前点検の省略が認められている場合があります。ですので、たまたま飛行場などでパイロットが外部点検をせずに飛行機に乗るのを見ても、「あれ~? このパイロットは外部点検しないんだ!」と思っても、航空局に言いつけないように!!(笑)。(省略が認められているのは民間機の話で、自衛隊機は省略不可です)
話が逸れましたが、外部点検の話に戻りましょう。
マニュアルには「外部点検は、飛行に影響を及ぼしそうな異常(亀裂・漏れ)を発見するために実施する」と最初に書かれています。特に各センサー(迎え角センサーや速度センサー、静圧センサー、全温度センサーなど)に異物がついてないかなども調べなさいと書かかれています。
具体的には、飛行機(戦闘機)の外部点検は、マニュアルで示されている簡単な図に従って右回りにしていきます。
点検すべき個所は機種によって異なりますが、すべての飛行機に共通するのは、
- エンジンのインテーク内に異物はないか
- 各種カバーが取り外されているか
- 各パネルがしっかり閉まっているか
などを確認することです。
機体ごともチェックすべきポイントも
とくにF-15では、機体の上にのぼって機体上面を確認することも指示されています。F-4も主翼の上を歩けますが、翼上面は地上からでも確認できるので実際は歩きません。飛行機の翼の上には、歩いても良い通路がちゃんと表示されていて、「WalkWay」と表示されています。
またF-15の場合は、注意事項として、特にレドームに傷や凹みがないことを確認しなさいと別項目で書かれています。
これはF-15の特徴なのですが、高い迎え角をとったときに意図しない急激なロールに入る可能性があるので、大きな非対称がレドームにある場合は、飛行を止めなさいと指示されています。たぶんこれに起因する事故がどこかで発生したのでしょう。
私の経験では、外部点検において、インテークの中に鳥がいたとか、ピトー管の中に虫が入っていたとか、静圧口の横に糸くずがあったとか、パネルのネジが1本緩んでいたとか、胴体下に何らかの液体が垂れていた、などの経験があります。世の中には、もっと大きな“出来事”があったという話は聞いたことがあります。
これら大事の原因の多くは、直前に故障が見つかって急遽修理したときなどに、最終点検手順が抜けていて、工具の置き忘れやパネルの閉め忘れ、誤接続など、そのまま飛んだら事故につながるものでした(これら事象の細部は大人の事情で省略させていただきますね)。
このように外部点検は、一般の方が想像される以上に大事な作業です。車ならば走っていて「あれ~、ちょっと変じゃん」と感じたらその場に止まり、外に出て点検すればいいでしょう。しかし飛行機はそれができないので、外部点検がとても大事になるのです。
また、外部点検でOKだとパイロットが判断すれば、それ以降はすべてパイロットの責任です。
なお武装関係の安全ピンは、外部点検の段階ではつけたままにしておきます。これらを引き抜くタイミングは点検の最後の段階で、離陸直前に専門整備員が抜いてパイロットに提示します。
コメントを残す