第1回 弾道をどのように集中させるか──照準の基礎知識

照準自体は楽だった機首部の機銃

ちなみに機首部にだけ機銃がある機体の場合は射線がそこまで広がらないので、照準の調整はもっと楽でした。Me109(Bf109)の多くの型や、日本陸軍の一式戦 隼、アメリカのP-38ライトニングなどです。

ただしエンジン部の周囲に機関銃も弾薬などのすべてを設置する必要があるため、搭載できる機銃も少なく、携行できる弾数も少ないという状況になりやすい欠点がありました。

[図3]のように三胴設計で機首部の空間を自由に使えたP-38を別にすれば、多くの機体は常に火力不足に悩まされることになりました。

[図3]ロッキードが開発したP-38ライトニング。三胴設計で、両端の胴体に双発エンジンを、中央の胴体には強力な機関砲と機関銃を備えていた
[図4]メッサーシュミットが開発したMe-109のG型。機首上部に13ミリ機関銃2丁と、プロペラスピナー内に機関砲1門(エンジンの中を銃身が貫くモーターカノン[Moteur canon])だけを積んでいた

しかし機関銃を機首部に積めるなら、その方が照準の調整は楽です。なので、のちに戦闘機がジェットエンジンを積むようになって機首部にエンジンを積まなくなると、より多くの銃と弾薬を積めるようになり、機首部に機関銃を積むパターンが主流になります。

[図5]朝鮮戦争世代のジェット戦闘機F-86Aセイバー。機首部の左右両側に計6門の12.7ミリ機銃を搭載し、十分な火力を維持することが可能となった

さらに時代が進み、機首部にレーダーと火器管制装置(FCS)が搭載され始めると再び胴体横に移動したりしますが、それでも主翼に機銃を積むことはなくなります。

プロペラ機の主翼機銃は妥協の産物ではあったのです。ちなみに(ジェット機の)胴体側面の機関銃も、主翼機銃ほどではないにしろ、上下左右の調整は必要なためにわずかに角度をつけて搭載されています。

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

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(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。