第4回 周囲に気を配りながら素早く照準できる──光学式照準器

照準のしくみ

次に照準のしくみです。反射ガラス上の照準点だけで、どうやって遠方の弾道集中点を示すのかというと、光の直進性を利用しました。

少し話が遠回りになるのですが、[図6]左の1は従来の照準の原理を図にしたものです。
2点を通る直線は一本しかない原理を利用し、二つの照準点を通して弾道の集中点を求めていました。

[図6]従来の照準は1のように「2点を通る直線は一本しかない原理」を利用したものであった。しかしレーザーのような光源を使えば、1点を真っ直ぐ指し示すことができる

これに対し光学照準器では、(二つの照準点なしに)弾道の集中点まで実際に直線を引くことを試みます。
現実に棒やヒモで目標位置までの直線を引くことは不可能ですが、直進する光を利用すれば同じ効果が得られるはずです。

それを実現できるのがレーザーポインタ照準です。
大雑把な図にすると[図4]右の2のように、レーザー光線を弾道集中点にくるように調整しておけば、目標上に光点が見えたときに照準は取れたことになるわけです。

もっとも、数百メートル先の目標上に照射したポインタの小さな光点を目視するのは困難ですし、そもそも第二次世界大戦中にレーザーなんてありませんから現実的な話ではありません。

しかしこの原理を応用すれば、2点の照準点がなくても、またアルディス式筒形照準器のように視界を狭めなくても、照準が取れることになります。

“仮想レーザーポインタ”で目と敵機を直線で結ぶ

では、レーザー光線なしで、実際にそれに等しい状況を作り出すにはどうすればいいのでしょうか。

光学式照準器を横から見た状態の、先ほどの[図2]で説明します。
構造は繰り返しになりますが、一番下に光源の電球が、その上には光像として投射されるレティクルが入った板が置かれます。その上に第3回でも見た平行光レンズが入り、最後にレティクルが投射される反射ガラスが置かれます。

[図2]横から見た光学式照準器の構造

レティクルの光像はパイロットに向け反射されるのですが、反射ガラスが45度であることが重要です。この入射角なら、ちょうど90度の角度でパイロット側に向かって反射されます。

そしてこの光線を反対側に無限に延長して考えると、機体の進行軸とほぼ平行な光線を設定できます。
この状態でなら、レーザーポインタのように、弾道の集中点上に反射ガラス上の光点を持ってくることができるのです。

これはある意味、“仮想レーザーポインタ”とでも言うべき発想でした。レーザーポインタが直接相手の上に光点を投射するのに対し、光学照準ではレティクルを真正面から見て目標の上に乗せて見ることで、同じような状況をつくりだしています。

しかし、実際は発想が逆で、この光学照準をヒントに、「だったら実際に光線を打ち出せばいいじゃないか!」ということでレーザーポインタが登場することになるのです。

夕撃旅団・著
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(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。