レティクルは必ず真正面から見なければならない
ここで、反射ガラス上の光像の点と人間の目の2点を結んだ直線を引くことが重要ですから、当然、パイロットはレティクルの光像をきちんと真正面から見なければならない問題が出てきます。
なぜならその原理上、斜め方向から反射ガラス上の照準点を見ると、両者を結ぶ直線とその先に延びているはずの光線はズレてしまい、照準点が弾道集中点を示さなくなってしまうからです。
ただしこの点の問題解決は楽で、ガラス板を正面から見たときに、レティクルがガラス板の中央に位置するように設定しておけばよいことになります。
パイロットは着座してベルトで固定するとき、このレティクルが最も見えやすい位置に頭を置くようにすればよいわけです。
ではいくつかの例をもとに、正しいレティクルの見方を紹介します。
[図7]ではガラス板に投射されているレティクルの上半分が見えていません。つまり、これでは視点が下過ぎて、目標機を見上げる形になっています。
よって、奥に見ている機体に対し、上側に円環中央の照準点がズレているということです。
逆に[図8]は、下半分が見えていない状態です。つまり視点が上から過ぎるということですから、照準点は機体の下になってしまっています。
[図9]はガラスの中央部に照準がきており、これで弾着の集中点にきちんと照準が合っていることになります。奥の機体に対しても真ん中に照準が合っています。
後は、距離を円環から読み取って引き金を引くだけです。
このように片目をつぶる必要もなく、両目で照準でき、しかもガラス板に映る照準円環(レティクル)が真正面に見えている状態で見れば、自動的に照準が合うのが光学式照準器でした。
その登場により、戦闘機における照準の困難さは大きく解消されることになったのです。
そして「平行光に変換してから、目の前の透明反射板に投射する。これにより遠方の敵機や外部の風景と同時に情報を見ることができる」という技術は、以後のHUD(ヘッド・アップ・ディスプレイ)に至るまで基本的な原理は変わりません。
この光学式照準器から、やがてジャイロ照準器、そして火器管制装置(Fire Control System:FCS)へと進化していくことになりますが、とりあえず、今回はここまでとします。
連載「いかにFCSは生まれたか」第4回─終─
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