第6回 敵機の未来位置に照準を合せてくれる ジャイロ式照準器の登場【前編 基本原理】
いかにFCSは生まれたか

最も簡単な偏差の予測方法

自分の位置は回転銃座として固定し、そこを中心に350メートルの半径を維持しながら旋回している敵機を考えます。ここで射程を350メートルとしたのは、弾道の落下が最低限で済む距離だからです。

図にすると[図3]のようになります。このとき、どうすれば敵機の未来位置を正確に予測できるのかを考えます。

[図3]自機(銃座)を中心し、350メートルの距離(射程)で移動する敵機をイメージした図

まずは、敵機の位置まで弾丸が到達するのに必要な時間を求めます。この時間の分だけ敵機は前進してしまうからです。

アメリカ製航空機の基本武装であるM2 12.7ミリ重機関銃の弾丸初速は秒速800メートル前後ですが、銃口を出た後は空気抵抗で急速に減速するため、300メートルを飛ぶ間におそらく秒速650メートル以下にまで減速しています。よって、ここでは平均速度は秒速700メートルとして計算しましょう。

となると、350メートルを飛ぶのに0.5秒かかりますから、ここでは0.5秒後の敵機の未来位置が予測できれば弾は命中することになります。

そこで真上の位置を基準位置とし、銃座から見て0.5秒間に敵機がどれだけの角度を回ったか(角速度1)を読み取ります。これを角Aとしましょう。戦闘中の戦闘機は常に全速力ですから、この後も同じ速度で飛行すると考えてよく、となると次の0.5秒後の位置を示す角度Bは角度Aに等しいとはずです。

よって角度Aが分かったなら、同じ角度を持つ角度Bの偏差を取って撃てば、弾は命中することになります。これが最も単純な偏差の未来予測の考え方で、すべての基本となります。

当然、敵がこんな単純な旋回をしてくれることはほぼありませんし、自分も飛行しながらの銃撃になりますから、固定された銃座という前提条件も無理があります。しかし、まず単純な例で考えてそこから実例に沿って複雑化すればいいので、現状はこの考え方で進めましょう。

脚注

  1. [脚注]角速度……円の中心(銃座)から見て、敵機が1秒間に回転した角度のこと。Rad/s(ラジアン秒)

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

究極の制空戦闘機F-22は、どのように生み出されたのか。その背景を、アメリカ空軍の成り立ちまで遡って考察していく1冊

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夕撃旅団ウェブサイト管理人
(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。