第6回 敵機の未来位置に照準を合せてくれる ジャイロ式照準器の登場【前編 基本原理】
いかにFCSは生まれたか

ジャイロスコープによって角度を知る

とりあえず偏差の予測はできることが分かりました。よって問題は0.5秒間に敵が移動した角度、すなわち角速度を読み取る方法に絞られてきます。

しかし現実問題として、そんな短時間に正確に目盛りを読み取るのは人間には困難ですが、正確に読み取れない場合、弾は絶対に当たりません。300メートル先だと5度読み違っただけでも、25メートルを超える誤差になってくるのです。

このため、なかなか偏差を計算する装置は出てこなかったのですが、やがてイギリスで三軸のジャイロスコープ(Gyroscope)を使えばこれが可能ではないか? と気が付く技術者が現れます。その原理を使ったのが「ジャイロ式照準器」でした。

従来の照準器が単に機銃の火戦集中点を示しただけなのに対し、ジャイロ式照準器は射撃に必要な偏差を自動的にパイロットに示す、すなわち射撃を補助する機能を持った照準器となりました。これが後の火器管制装置(FCS)への第一歩だったと言っていいでしょう。

ジャイロスコープの原理

では、ジャイロスコープでどうやって敵機の角速度([図3]に見た角度A)を計測するのか。この点を理解するにはまずジャイロスコープの原理を知る必要があるので、簡単に説明します。

ジャイロスコープは「フーコーの振り子」[図4]で知られるレオン・フーコー[図5]が命名した装置で(彼が発明したとも言えるが、厳密にはそれ以前にも似たような装置はあった)、高速で回転する中心軸付きの円盤を回転台座(ジンバル)に固定したものです。


[図4]葛飾区郷土と天文の博物館が、約1日間、「フーコーの振り子」を微速度撮影した映像。振り子の振れる方向が時計回りに少しずつ変化しているのが分かる。これは振り子はずっと同じ方向に振れているのだが、地球が自転しているために(地上から見ると)向きが変わっているように見えるためだ

[図5]レオン・フーコー(1819〜1869年)の肖像。フランスの物理学者。1851年、ナポレオン3世からパリのパンテオン寺院を借り、長さ67メートルの巨大な振り子を用いて地球が動いていること(地球の自転)を証明した

ジャイロスコープという名称は、ギリシャ語の回転体=ジャイロと、英語の観測装置=スコープを合わせた造語です。日本なら、高速回転するコマを回転台座の中に収めたもの、と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

ジャイロスコープには回転体(コマ)を支ええる回転台座(ジンバル)の数によって、いくつかの種類があります。ジャイロ式照準器で使われるのはX・Y・Zの三軸、すなわち360度のあらゆる方向に傾きの自由が確保された三軸ジャイロスコープです。これを簡単な図にすると[図6]のようになります。実際はコマを高速回転させる動力(通常は電動モーター)が付きますが、図では省きました。

[図6]X・Y・Zの三軸の傾きの自由が確保されている三軸ジャイロスコープのイメージ
[図7]三軸ジャイロスコープの動作。X・Y・Z軸がいくら傾いても、中心で回転するコマの軸はぶれないのが分かる(Animation:Lucas Vieira)

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

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(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。