第7回 本当に実戦で有効だったのか?──ジャイロ式照準器2/3

K-14ジャイロ式照準器のパーツ解説(後半)

[図5]アメリカ陸軍のK-14ジャイロ式照準器のマニュアル

③弾道集中点までの距離を変えるダイヤル(Range Dial)

機種ごとに弾道集中点(事実上の射程)が異なるので、その調整が必要となります。とはいっても一度調整してしまえば、以後は触る必要はないものです。というか、逆に飛行中は絶対に触るな、というものになってきます。

④レティクルの投影に使う電球収納部のフタ(Lamp Cover)

電球が切れたらここを開けて交換します。その上の半円状のカタマリは、緊急着陸時などにパイロットが照準器に顔をぶつけて大ケガしないようにするクッションです。

ちなみに照準器本体を挟んで裏側、すなわち照準器後部に四角い箱と円筒が付いているのが見えると思いますが、四角い箱は曇り止めのシリカゲルを入れるための箱で、その下の筒はジャイロスコープ用の電動モーターが入ったものです。


⑤電球の明るさを調整するダイヤル(Light Rheostat)

⑥選択スイッチ(Selector Switch)

これを「固定(Fixed)」にすると、ジャイロモーターを固定し、従来の光学式照準器としても使えました。ちなみに極めて精密な機械なので衝撃に弱く、着陸時には必ずジャイロを固定するように指示されています。

電源スイッチもあるのですが、これを切るとジャイロが固定されず衝撃によって故障しやすくなるため、故障時以外、エンジン始動後は常にモーターを回しておくように指示されていました。

ちなみに⑤と⑥の装備はのちに本体と切り離され、コクピット左手の専用スイッチパネルへと移されます。

この照準器の中には前回見たジャイロスコープと駆動用の電動モーターがあり、さらにレティクルの投射装置を二つ内蔵するので、従来の照準器に比べると極めて巨大な装置とっているのが特徴です。

 

なお、ドイツのジャイロ式照準器の場合はかなり構造が異なるのですが、残念ながら筆者はよく知らないので、この連載では取り上げません。

とりあえず今回はここまで。次回は実際の使い方を少し詳しく見ていきます。

 

連載「いかにFCSは生まれたか」第7回─終─


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(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。