第8回 実際の使用方法と残された問題点──ジャイロ式照準器3/3

レティクルによる偏差の指示

実際のレティクルは、投影は次の[図4]のようなものとなります。

ちなみにジャイロ式照準器は偏差を直接表示し、かつ敵機までの距離に合わせて測距用円環を自由に拡大縮小できるため、従来付いていた計測目盛りはすべて不要となりました。その結果、極めてシンプルなレティクルになっていることにも注意してください。(参考:[図2])

[図4]ジャイロ式照準器のレティクルのイメージ

[図4]の一番上のように直線で飛んでいる限り、二つの装置から投影されるレティクルは反射ガラスの中央で一つに重なっています。また、戦闘中以外や、故障を避けるためにジャイロを固定している場合も同様です。

中央の円環と十字が照準点を示し、このレティクルは常に反射板の中央に位置したままです。弾道集中点の位置が変わることがない以上、当然と言えば当然ですが。

その周辺にある6つのダイヤモンズ(Diamonds)と呼ばれる点は、測距と敵機捕捉のために使う円環です。これがジャイロスコープに連動して動き、弾丸の飛翔時間分だけ移動してから固定されます。

 

[図4]の真ん中の図が右旋回中、[図4]の下の図が左旋回中の状態を示しています。当然、旋回速度(角速度)が速いほど、二つのレティクルの間隔は開くことになります。

敵機をダイヤモンズ円環内に捉えれば、照準点が自動的に敵の未来位置を示しますから、後は引き金を引けばいいだけです。

 

ちなみにマニュアルには「敵機をダイヤモンズ円環内に捉えてから1秒維持せよ」と書いてあります。

これは地球上である限り、弾道の集中点までの弾丸到達時間は1秒を超えることはないため、それまでには必ずレティクルが固定されるからです。おそらくパイロットに分かりやすいように「1秒待て」ということにしたのでしょう。

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

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1件のコメント

1ページ目の「①最初に敵の位置をジャイロスコープによりマークする。」とありますが、このマークするためにはスイッチを押す又はトリガーを引くような手順を行うのでしょうか。

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著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。