第二次世界大戦期に登場したレーダー
第二次世界大戦中から、すでに航空機へのレーダー搭載は始まっていました。[図3]は、日本海軍の夜間戦闘機「月光」に搭載されたレーダー用の八木アンテナです。
機載レーダーは当初、夜間にやってくる爆撃機の探知と迎撃を主な目的としていたので、ほとんどが夜間戦闘機に搭載されていました。他にも英米は、地形を読むための爆撃照準用レーダーもすでに実用化していましたが、こちらは記事の主題と関係ないので今回は触れません。
夜間戦闘機の場合、遠距離から敵爆撃機を発見し、接近して撃墜するまでが任務です。ですから敵機までの距離だけでなく、方位の情報が必須となります。よって、方位測定に有利な指向性の高いアンテナが必要であり、当初は[図3]のような八木アンテナが主流でした。
その運用にも専用の操作員が必要となることから、双発・複座以上の大型機への搭載が普通だったのです。
ただし(射撃照準器用の)レーダー照準の場合は、目の前に敵機までの距離だけが分かればよいので、そこまで大型のアンテナは不要です。よって、その目的に特化した軽量のレーダーが開発されることになります。
戦後に登場した「測距レーダー付きジャイロ式照準器」
レーダーと聞くと、「敵を発見する」「ミサイルをロックオンする」といった印象があるかもしれません。しかしRadio Detecting and Ranging(電波探知および射程測定)を略してRadarであり、その名の通り、本来は敵の探知と同時に、正確な測距を目的とした装置でした。
原理的には打ち出した電波が目標に当たって反射されることで敵を探知し、電波の往復時間からその距離を測定するだけの装置です。よって方位や高度を測定するには付随した別の装置が必要なのですが、機能を測距に限定すればこれらの装置は不要になり、さらに小型化が可能になります。
そして小型化ができるなら、射撃照準器にこれほど適した装置はないということになるわけです。
初めて測距レーダー付きジャイロ式照準器を搭載したF-86
小型化には一定の時間がかかったのですが、戦後、実戦投入できるレベルになり、最初にこれを搭載したのが、あのF-86セイバーです。
[図4]の矢印の先を見てほしいのですが、機首先端の黒い部分がレーダーのカバーで、おそらくプラスチック製です。レーダー波を効率よく捉えるため、レーダー部のカバーは非金属製で、ベトナム戦争世代までの機体では、電磁波を吸収しやすい黒色に塗られているのが普通でした。
ちなみに第二次世界大戦中の1944年1月8日(日本が紫電改の初飛行に成功したわずか1週間後)に初飛行した、一世代前のジェット戦闘機であるF-80の機首部にも同じような黒いプラスチック製のカバーがあります。[図5]
これもレーダー搭載かと思ってしまうところですが、こちらは航法装置用の無線方向探知機のアンテナが入っているだけで、まったく別物ですからご注意あれ。ちなみにF-80から開発され、航空自衛隊でも使われた練習機T-33にも同じものがあります。
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