照準器の調整──M14は手軽に細かく調整できるが、AK47は上下のみ
さて銃というものは、正確に狙っても狙った点とは少し違った所に着弾することがある。腕が悪いということではなく、何発撃っても弾痕は標的中心の右下だとか左だとかにまとまっているわけである。これを標的の中心を狙って命中するように照準器を調整することを「ゼロ点規正」という。
M14だと照門の右側に左右調整ダイヤルがあり、左に上下調整ダイヤルがあって、これをカチカチと回して照門を上下左右に動かすことができる。AKはこれができないのだ。
いや、できなくはない。上下調整は距離に応じて照門の高さを変える照尺を使って調整はできる。300mの距離で、照尺の目盛300で撃ってみて、弾着が標的の下へ行くようなら300mの距離を400の目盛りで撃って敵兵に命中させるということはできる。
しかしM14のように「もう10cm上へ」というような細かい調整は不可能だ。またAKの照門には左右調整機能はない。もっとも、専用工具を使って照星を左右に調整することはできる。しかし標的に銃を向けた状態で照門の横のダイヤルを回して調整できるのと、射撃を一度中止して専用工具を使って調整するのは大きな違いだ。
そもそもロシア軍では、兵隊にゼロ点規正などという、頭をつかうことをさせようと思っていないのだろう。やはりAK47というのは、昨日まで羊を飼っていた農民を徴兵して、前線に出てから戦死するまでの平均時間2週間という兵士に持たせる銃なのだ。
安全装置──M14は使い勝手抜群、AK47には無し
それに対してM14は、いかにもプロ好みの銃である。安全装置の使い勝手がいい。引き金に指をかける前に、引き金の前にある小さな板状のレバーを、人差し指の爪側で前へ押せばいい。
そしてそのまま今度は引き金を引けば発射だ。右手を一度グリップから離して機関部側面のレバーを押し下げるAK47にくらべ、瞬時に安全装置を解除して撃てる(そのはずだが、M14の民間バージョンM1Aに、これが非常に固いものがあった。現実のアメリカの工業製品には、しばしば工作の雑なものがある)。
さて、筆者が1960年代のどこかの国の王様で、自国の軍隊にM14かAK47のどちらかを採用しなければならないとしたら、どちらを選ぶだろう?
先に述べたように、それはその国の地形による。ペルシャ王ならM14だし、ブルネイ王ならAK47だ。しかし、王様が狩りに使うならM14だ。特注の高級ウォルナットのストックの亜麻仁油仕上げで。
連載「銃 vs. 銃」第2回─終─
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