第3回 リボルバーの日露戦争──26年式拳銃 vs ナガン

ナガンのダブルアクションは引き金が重すぎる

さて26年式はダブルアクション1・オンリーである。指で撃鉄を起こして、軽い引き金の引きで射撃ができるシングルアクションと比べると、正確な射撃をすることができないのだ。とはいえ、実際標的を撃ってみた結果は図のようなもので、騎兵の拳銃射撃なんて敵のサーベルの1m遠くから撃てればいいのだから。

筆者が26年式拳銃で射撃を行なった結果(10mほど距離から心臓の位置を狙った)。○が片手射撃、△が両手射撃、×が膝をついての両手射撃だが、どれもさほど変わず、そもそも高い命中率は期待できないようだ

ナガンはシングルアクション2でもダブルアクションでも撃てる。「それは初期型の話で、後期型はダブルアクション・オンリーなっている」とも聞くのだが、筆者が撃ったナガンはシングルアクションで撃てた。

ナガンはシングルアクションで撃てないと駄目だ。ナガンのダブルアクションはとんでもなく引き金が重く、実際上ダブルアクションじゃ撃てないと感じるほどだ。ロシア兵はこんなものを本当にダブルアクションで撃ったのか?

ナガンの引き金の重さは、独特のシリンダーギャップからのガス漏れ防止機構に起因している。たいていのリボルバーはシリンダーと銃身の間に0.2mm前後の隙間がある。そこから火薬の燃焼ガスが漏れる。

そこでナガンは引き金を引く力でシリンダーを前へ押して、薬莢の前端を少し銃身に押し込まれるようにして隙間をなくし、ガス漏れをなくして、火薬のロスを少なくして威力を増そうというアイデアだった。しかし実際には、ここから漏れる火薬ガスによる威力低下は数%にすぎず、変な工夫をするより火薬の量をそれだけ増やすほうがずっとシンプル・イズ・ベストな方法だ。

ナガンの引き金を引くと、シリンダーが少し前進しているのが分かる(Image:Миш Ган氏の画像から抜粋)

脚注

  1. ダブルアクション……引き金を引くとハンマーが連動して起き、最後まで引き切るとハンマーが落ちて発射できる方式。指一本で連続射撃が可能だが、引き金が重いので命中率が悪くなる傾向がある
  2. シングルアクション……(毎回)ハンマーを手動で起こしてから、引き金を引いて発射する方式。いちいちハンマーを起こす動作が必要となるが、引き金が軽いので相対的に命中率は良くなる

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かのよしのり
1950年生まれ。自衛隊霞ヶ浦航空学校出身。北部方面隊勤務後、武器補給処技術課研究班勤務。2004年定年退官。
著書に『銃の科学』『狙撃の科学』『重火器の科学』『拳銃の科学』(SBクリエイティブ)など多数。