2016番機で大幅にコクピットを改修
なお、J-20は2016年の珠海(ジューハイ)航空ショーから展示飛行を実施しているが、その際には、機体下面にリフレクター(レーダー反射面積[RCS]を増大させる器材)を装着している。素直に解釈すれば、2016年11月までには一定の対レーダー・ステルス性能を有していたということになる。
キャノピーも、検証機においてはフレームレスのものが装備されていたが、原型機ではフレームが追加されている。緊急時の射出方式も見直され、検証機ではキャノピーを投棄後、座席を射出する方式を採用していたものと推定されるが、原型機においてはスルーキャノピー(緊急時にはキャノピーを破壊すると同時に、座席を射出する方式)用の導爆索(キャノピー爆砕用爆薬を充填したパイプ)が内側に装備された。
原型機の最終号機である2016番機(2015年11月にロールアウト)においては、テストパイロットらの意見を取り入れ、総設計師である楊偉自ら大幅なコクピット改修を行なったとされている。
J-20のコクピットの全容は明らかにされていないものの、珠海航空ショーで展示された機体を見ると、前面はF-35に類似したタッチパネル式の大型ディスプレイで構成されている。J-20のテストパイロットの一人である李剛(リー・ガン)も、テレビ番組の中でJ-20のコクピットについて「驚くほどスイッチの類いが少ない」「ビデオゲームのように操作できる」と述べている。
| #AirshowChina 2018 | Bien qu'il a été confirmé officiellement que le J-20 utilise un cockpit mono-écran, mais celui qui est exposé au Salon de Zhuhai cette année n'est pas représentatif. pic.twitter.com/A2y7m9vxgM
— East Pendulum (@HenriKenhmann) November 9, 2018
East Pendulum氏がTwitter上で公開したAirShow China2018での写真によれば、J-20のコクピットはF-35のような大型ディスプレイを備えていることが分かる[右上のTwitterロゴをクリックするとリンクページへ移動できます]
F-35を手本にしたかのような開発手法
2010年頃、ロシアよりTu-204旅客機×1機を購入している。同機は中国飛行試験研究院に配備され、J-20の試験飛行と重なる時期に開発テストベッドとして試験に投入されたようだ。
テストベッドに、大きな旅客機が使用された理由は、実際に試験を行なう機材のほか、測定・記録用機材を搭載するスペースが必要なのと、一定数の技術者を空中での試験に従事させる必要があるためだと思われる。これはF-35の試験においても同様で、B737が使用されている。
@CombatAir
Modern Chinese Warplanes update 32 online - CFTE Tu-204C J-20 avionics & radar testbed - backgroundhttps://t.co/yt6r9gDuuz pic.twitter.com/5QUwtNHnLl— @Rupprecht_A (@RupprechtDeino) February 3, 2017
J-20のテストベッドとして改造されたTu-204C。カナードを取り付けられているのが分かる[Rupprecht_A氏のTwitter投稿へのリンク。右上のTwitterアイコンをクリックするとリンク先へ移動できます]
同研究院は、すでにY-7およびY-8輸送機ベースのテストベッド用機体を保有しており、J-10やJ-11などの開発に投入してきた。それでも新たにジェット旅客機をテストベッドとして投入したということは、J-20の試験においては、一定の飛行速度や遠方の飛行エリアにおける試験飛行が求められたのかもしれない。
なお、ここまで述べてきた検証機と原型機による「システムを含む試験手法」は、F-35の開発において採られた手法に類似している。
F-35の場合は、1996年、概念実証段階における検証機がロールアウトした後、システム開発および実証段階として複数の機体が製作され、実用化に向けた試験が行なわれた。また、EOTS1や新型データリンク試験のため、B737を改造した新型テストベッドを使用している点も類似している。
F-35開発においては、この後ロッキード・マーティン対ボーイングのコンペ審査になる。コンペの時期は予算執行に関連した事項であるため、このあたりは国ごとに相違が当然あるのだが、それを除けばJ-20の開発手法はF-35を手本としていたのかもしれない。
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