第6回 本当に「ステルス戦闘機」と呼べるのか?──J-20の性能検証(1)

J-20のステルス性能①──機体形状

J-20のステルス性能については、「F-22に比べて機体が大きく、翼の面積も広い」とか「カナードによりステルス性が台無し」といったように、メディアでさまざまな論評がなされてきた。

J-10の総設計師であり、J-20の総設計師・楊偉(ヤン・ウェイ)の師匠でもある宋文驄(ソン・ウェンゾン)は、2001年に記した論文「低アスペクト比翼の高揚力機体の空力設計」の冒頭で、ステルス対策を含む機体の設計について「前方象限1からは各翼の後退角度と新形式のインテーク、側方からは機体断面と尾翼配置をステルスに適したものとしなくてはならない」と述べている。

ステルスには「反射角のルール」ともいわれるものが存在する。敵のレーダー波の反射を回避するため、翼やその他の構成面を、到来するレーダー波を逸らす角度で統一する。J-20の平面図を見てみると、カナードや主翼前後縁の角度などはそれぞれが一致しており、ステルス対策を意識したものであることが一目瞭然である。

上面から見たJ-20。同じ色の部分が角度を揃えているとされる部分。先のF-22の写真も同じように角度が揃えられているのが分かる(Image:ermaleksandr via flickr)

機体断面についても、F-22やF-35などのステルス戦闘機同様、機首部分にはチャイン(側面の山型の折り目状突起)が設けられている。胴体も側方に垂直になった面はなく、すべての面に傾斜がつけられており、レーダー反射を逸らす着意が払われている。

正面から見たSR-71ブラックバード。機体の上半分と下半分が接合され、張り出し状になっている部分がチャイン(矢印部分)。こうすることで水平方向からのレーダーを(発信方向に)返す部分が限りなく小さくしている(Image:NASA)
J-20にもチャインが設けられている(矢印部分)。この仕様はF-22やF-35、YF-23、Su-57などにも採用されている(Image:Sunson Guo via flickr)

脚注

  1. 前方象限……機体を架空の球体の中心に置いた際、機首方向の半球のこと。軍用機において、脅威の到来方向やセンサーなどの性能を示す場合に使用される表現。逆方向は「後方象限」と呼ばれる。

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薗田浩毅元自衛隊情報専門官、軍事ライター、ネイリスト
(そのだ・ひろき)
1987年4月、航空自衛隊へ入隊(新隊員。現在の自衛官候補生)。所要の教育訓練の後、美保通信所等で勤務。 3等空曹へ昇任後、陸上自衛隊調査学校(現小平学校)に入校し、中国語を習得。
1997年に幹部候補生となり、幹部任官後は電子飛行測定隊にてYS-11EB型機のクルーや、防衛省情報本部にて情報専門官を務める。その他、空自作戦情報隊、航空支援集団司令部、西部および中部航空方面隊司令部にて勤務。2018年、退官。