「“ステルス破り”のためのUHF帯レーダー」にも対策
上記の技術は、到来するレーダー波を機体表面の物質で減衰させる技術だが、新たなアプローチも認められる。現在の対レーダーステルス塗料が主眼とする周波数帯は、表3のようにSバンドやCバンド、Xバンドとされている。
近年、ステルス機を探知するための技術として注目されているのが、Sバンドよりも低い周波数帯のUHF帯(500MHz〜1.5GHz。Lバンドとも呼ぶ)を使用するレーダーである。
UHF帯の電波は、高い周波数帯の電波と比較して、電波吸収塗料の製造が困難(吸収する物質が大きくなるため、塗料や薄膜として整形できない)であるほか、電波伝播(空間における電波の進み方)において回り込みが発生しやすいといわれ、電波を逸らす形状ステルス技術に対しても有利といわれる。また遠距離からの探知に優れるという特性もあるが、分解能1に劣るという弱点もある。
コソボ紛争でのF-117撃墜においてもロシア製UHF帯レーダーにより探知されていたことが噂されているほか、冷戦時代より米国のステルス技術を適用した航空機(U-2やSR-71)の接近・侵入に直面してきたロシアや中国は、UHF帯の早期警戒レーダーを継続的に使用している。
米海軍のほか、航空自衛隊や台湾空軍も導入したE-2Dホークアイ早期警戒機は、ステルス機の探知を念頭にUHF帯レーダーを装備している。優れた信号処理技術により、伝播が不安定なUHF帯レーダーの分解能を向上させたとされ、「ステルス・ハンター」とも呼ばれている。
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