第7回 J-20の性能検証(2)──中国が独自開発するステルス材料

「“ステルス破り”のためのUHF帯レーダー」にも対策

上記の技術は、到来するレーダー波を機体表面の物質で減衰させる技術だが、新たなアプローチも認められる。現在の対レーダーステルス塗料が主眼とする周波数帯は、表3のようにSバンドやCバンド、Xバンドとされている。

[表3]ステルス塗料が対象としている周波数帯の種類

近年、ステルス機を探知するための技術として注目されているのが、Sバンドよりも低い周波数帯のUHF帯(500MHz〜1.5GHz。Lバンドとも呼ぶ)を使用するレーダーである。

UHF帯の電波は、高い周波数帯の電波と比較して、電波吸収塗料の製造が困難(吸収する物質が大きくなるため、塗料や薄膜として整形できない)であるほか、電波伝播(空間における電波の進み方)において回り込みが発生しやすいといわれ、電波を逸らす形状ステルス技術に対しても有利といわれる。また遠距離からの探知に優れるという特性もあるが、分解能1に劣るという弱点もある。

 

コソボ紛争でのF-117撃墜においてもロシア製UHF帯レーダーにより探知されていたことが噂されているほか、冷戦時代より米国のステルス技術を適用した航空機(U-2やSR-71)の接近・侵入に直面してきたロシアや中国は、UHF帯の早期警戒レーダーを継続的に使用している。

米海軍のほか、航空自衛隊や台湾空軍も導入したE-2Dホークアイ早期警戒機は、ステルス機の探知を念頭にUHF帯レーダーを装備している。優れた信号処理技術により、伝播が不安定なUHF帯レーダーの分解能を向上させたとされ、「ステルス・ハンター」とも呼ばれている。

E-2がD型で新たに搭載したAN/APY-9レーダーはアクティブ・フェイズド・アレイ(AESA)で、UHF帯にも強い。写真は2011円2月、空母ハリー・S・トルーマンから最初の発艦を行なった際のもの(Image:U.S. Navy)

脚注

  1. 分解能……探知した目標の距離・角度の正確性。

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薗田浩毅元自衛隊情報専門官、軍事ライター、ネイリスト
(そのだ・ひろき)
1987年4月、航空自衛隊へ入隊(新隊員。現在の自衛官候補生)。所要の教育訓練の後、美保通信所等で勤務。 3等空曹へ昇任後、陸上自衛隊調査学校(現小平学校)に入校し、中国語を習得。
1997年に幹部候補生となり、幹部任官後は電子飛行測定隊にてYS-11EB型機のクルーや、防衛省情報本部にて情報専門官を務める。その他、空自作戦情報隊、航空支援集団司令部、西部および中部航空方面隊司令部にて勤務。2018年、退官。