中国が独自開発した「ステルス薄膜」
このUHF帯レーダーへの対策として、中国の技術者たちは2015年、「アクティブ周波数減衰スキン」とも呼ぶべき技術を開発している。これは0.8ミリの薄膜上に印刷された基板上に半導体を並べたもので、この膜に電圧をかけることによりレーダー反射波の減衰を図るものだという。
試験においては、0.7〜1.9GHzのUHF帯レーダーの反射波を10〜40db減衰させることができたという。この技術が実用化されれば、J-20はUHF帯レーダーに対してもステルス能力を有することになり、その脅威度は大幅に上がることに繋がる。
J-20の機体表面は、写真などで見る限り、F-22と違い非常に滑らかな印象を受ける。先に見た中国企業による「ステルス薄膜」といえるものが大規模に適用されているのかもしれない。もちろん、機体全体をそのような薄膜で覆うことは困難と思われることから、カーボン・マイクロ・コイルなどを混入した塗料の併用も必須となるだろう。
このように中国は、レーダーステルス対策において幅広い技術的アプローチを行なってきたことが分かる。
現時点において、そのステルス性能を数値で表すことは困難であるが、台湾やオーストラリアにおける研究では、後方を除く大半の部分においてRCSは1㎡以下とされ、最も優れている正面においては「0.1㎡程度」としている。顧誦芬のメモに記された目標性能である「前方象限からのRCS 0.3㎡」は達成できた可能性が高いと筆者は考えている。
しかし一方で、「J-20の後方からのステルス性能は1㎡を超える」とも指摘されている。次回は、J-20の後部周りのステルスについて述べたいと思う。(※)
■参考文献
・「現代艦船」誌 2018年10月号、2019年6月号、2020年07-08合併号(中国船舶重工業集団公司)
・「兵工科技」誌 2020年13号(陝西省科学技術協会)
・『一种小展弦比高升力飞机的气动布局研究』(宋文骢 論文、2001年8月)
・「表面技術」誌 2010年12月号(中国兵器装備集団有限公司)
・「现代技术陶瓷」誌 2019年第1-2期(山东工业陶瓷研究设计院有限公司)
・中華人民共和国国家知識産権局 特許申請第106163247号(2016年11月23日)
・中国研制成功SH6隐身膜 水平领先世界
・A Preliminary Assessment of Specular Radar Cross Section Performance in the Chengdu J-20 Prototype
・中国新蒙皮技术或实用 比F22先进
連載「元自衛隊情報専門官から見た中国戦闘機」第7回─終─
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