DSI技術が高速性能のネックとなっているが……
本連載の第2回においても触れたが、J-20の大きな特徴の一つにDSI(Diverterless Supersonic Inlet)の採用がある。
その利点は、構造がシンプルで軽量化を実現できることや、コンプレッサーファンを隠すようにインテーク付近にコブがあるため、ステルス面で有利であることだ。
しかし、DSIも良いことずくめではない。
まずDSIには、F-15のインテークに見られるような、吸気効率を調整するための可動部がない。
DSIインテークは、従来のスプリッターベーンなどのように境界層(機体表面近くにまとわりつく速度が遅い空気の層。下図の赤色で表示)を分離するのではなく、コブにより境界層をインテークの外側に押しのけている。構造が単純で軽量、かつステルス面で有利という利点がある一方、境界層を分離・吸引する構造がないため、速度が上がるにつれインテーク内に入り込む境界層の空気が増加し、エンジンの吸気効率に悪影響が出る。
これは、可変部を持たないDSIの負の側面である。DSIの核心技術はインテーク内側に設置された「コブ(BUMP)」の形状にあるとされる。求められる速度域に合わせてコブの大きさや形状を最適化するよう設計するのだが、可変部を持たない故にすべての速度域に対応できるような設計は困難とされる。
事実、DSIを採用しているF-35は最大速度マッハ2を超えることはできないといわれている。海外のF-35ついての技術的評論においても、その最大速度を「マッハ1.8程度」としているものが多い。
しかし、J-20がベンチマークとしたF-22はCaret型インテークを採用し、その最大速度はマッハ2クラスなのだ。
>速度に合わせて「DSIのコブ」を変化させる!?
>しかし筆者が知る限りにおいて、このような技術的アプローチを行なっているのは現在までのところJ-20だけだ。
https://twitter.com/EnriqueM262/status/1246441482661363713
https://www.thedrive.com/content/2020/04/235235ff.jpg
コーンの大きさを変えて空気流量を制御するのはF-111でやっていたこととなる。
>次々と意欲的に新しいアプローチを続けるJ-20から当分目が離せそうにない。
膨らまし方が違うだけで、新しいアプローチどころか60年前の技術の焼き直し、コーンの前後移動がない分だけ簡略版でしかない。
超音速機のインテークがショックコーン、二次元ランプと発展した先で固定インテークが主流となったのは、可変機構部分の省略による重量軽減、コスト削減のメリットがあり、それを可能としたのは空気流量を適切に制御できるインテークの設計技術の確立、固定式のインテークであっても推力を確保できるエンジンの実用化、さらにはマッハ2以上の高速を必要としなくなったという要求性能の変化があってのこととなる。
読者にとって「中国人が新技術(っぽいの)を開発しました、スゴイ」を伝えられること重要ではない。
なぜ中国人がいまになって可変インテークを必要としているのか、それが戦術上の要求なのか、具体的にこのガジェットの採用で速度、航続性能はどのように向上するのか、中国人の期待する性能向上はその程度なのか、それともエンジンが繊細な空気流量の制御を必要とするなどの技術的理由で重量もコストも増加するデバイスが必要なのかといった、開発、採用の意図・理由についてなど、中国語に精通していなければ掘り下げられない記事に期待している。
拝読いたしました
F-22に比肩する性能に近づきつつあるということですね
また、当該機について生産数が200機近いことも判明していますが
我が国をはじめ台湾・米国・韓国といった周辺国家の空軍力は
とくに主力戦闘機分野でどのような対抗策が練られているのでしょうか?
ぜひこの点を薗田さんにご解説ねがいたく思います