第2回 操縦手席/砲手席/車長席はどうなっている?──現代戦車の内部配置

パーツ解説

砲口照合装置(マズル・リファレンス装置)……主砲の射撃精度を維持するための装置。砲口上部に取り付けた鏡へレーザーを照射して、砲身の曲がりや歪みを測定する。そして弾道計算機へデータを送って修正値を算出し、補正を行なう
M256型120mm滑空砲砲身部……砲身内部には腔綫(こうせん)が刻まれておらず、砲弾の発射で摩耗しないように硬質クローム・メッキが施されている
噴煙器(エバキュエーター)……砲を撃ったときに発生する高圧ガスが、戦闘室内に吹き返してくるのを防ぐ装置
7.62mm同軸機銃
砲塔前部装甲ボックス……装甲が一番厚い砲塔正面と車体正面は、装甲鋼板で造られたボックス状になっている。内部はハニカム構造1にされた劣化ウランなどの材質の異なる防弾構造材が重ねて封入され、複合装甲になっている。ちなみに劣化ウランの装甲材が導入されたのは1990年代始めで、重装甲型のM1A1 HAからとなる

砲耳……砲の砲塔への取り付け部
砲仰俯装置……砲の仰俯角2(ぎょうふかく)を調整する
M256型120mm滑空砲基部……砲弾発射時の反動による砲の後退を制御する砲駐退複座機や、砲弾を装填し砲尾を閉鎖する閉鎖機、砲を保持し砲塔に取り付けるための砲架で構成されている
砲手用照準装置……昼間用の光学式潜望鏡と夜間用の赤外線映像装置を組み合わせた照準装置。ちなみに目標への照準や目標までの測距は、砲手が照準装置を使って行なう。その後の、砲弾を命中させるための弾道計算や最終的な砲の旋回や仰俯角などの微調整は、弾道計算機を中心とした射撃統制システム(FCS)が行なう
車長用12.7mm機銃

M1A1戦車の内部。M1A1は、1981年にアメリカ軍が採用したM1の改良型で、主砲を51口径105mmライフル砲から44口径120mm滑空砲に換装し、電子機器類もアップデートされている。いくつかのタイプがあり、現在も陸軍と海兵隊で運用されている(Illustration:坂本 明)[クリックで拡大可]

車長用照準サイト……光学式で砲手用照準装置と接続されている
装填手用7.62mm機銃
車長用キューポラ火器照準器および動力装置
車長用パワーコントロール・ハンドル……ハンドルを操作することで、車長がレーザー測距装置の発振や、砲・同軸機銃の射撃、砲塔の旋回を行なえる
バスル部砲弾収納庫……砲塔後部の張り出しに設置された砲弾庫で、戦闘室とは装甲板のⒶアクセスドアで仕切られている。また砲弾庫が被弾して砲弾が誘爆した場合は、天井部のⒷ装甲カバーが吹っ飛ぶことで爆風や火災を上部へ逃し、戦闘室へのダメージを極力軽減する構造になっている

アクセスドアと装甲カバーの役割(Illustration:坂本 明)

無線機アンテナ
環境センサー……弾道計算に必要な気象条件因子を測定するためのセンサー装置
砲塔外部ラック
エンジン排気誘導ダクト
冷却気送風ファン……潤滑油などへ送風を行なって冷却するラジエターの機能を果たす

脚注

  1. ハニカム構造……ハチの巣(Honeycomb)のように六角形を隙間なく並べた構造
  2. 仰俯角……水平を基準とした上下方向の角度

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坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。