第2回 操縦手席/砲手席/車長席はどうなっている?──現代戦車の内部配置

パーツ解説のつづき

冷却用空気取り入れ口
機動輪……エンジンのパワーを履帯に伝え、車体を動かす。星型の菅軸・外歯噛合式1で特殊合金製
X-1100-3Bトランスミッション……トルクコンバータや変速機、操向機、制動機の各機構で構成される動力伝達装置。機動輪に動力を伝達する
熱交換器
転輪……車体を支え、履帯が円滑に回転できるようにする。アルミ合金製で、周囲にソリッドゴムが焼き付けてある。また第1、第2、第7転輪部分には車内側にショックアブゾーバーが取り付けられている

M1A1戦車の内部(前ページと同じもの)(Illustration:坂本 明)[クリックで拡大可]

スイングアーム……転輪とトーションバーを連結して車体を支え、地面の凹凸に応じて転輪が上下動できるようにするサスペンション。転輪が上下動することをホイールトラベルといい、この動作により不整地を走行する際に車体への振動を減らし、高速で走行できるようにする
トーションバー……履帯から転輪、そして車体へ伝わる衝撃をバーがよじれることにより、バネとして吸収してしまうサスペンション。車框下部に各側7本づつ配置され、バーの片側はスイングアームのサポートシャフト部に、もう一方はトーションバー・アンカー部に嵌合2(かんごう)している。材質は高硬度435H鋼
エンジン支持架
履帯……機動輪や転輪、誘導輪を囲むように連結された履板の環で、これをぐるぐる回転させることで車体が動く)、
ATG-1500ガスタービン・エンジン……M1は世界で初めて実用化されたガスタービン戦車。ガスタービン・エンジンはディーゼル・エンジンに比べて構造が単純で、機動時の音が静か。レスポンスが良くて加速性能や登坂能力が高く、寒冷地での始動性が良好であるなどのメリットがある。
一方、エンジンが高温となるため、高級耐熱材料が必要でコストが高く、熱効率が悪いため、燃費が悪いなどのデメリットもある。ガスタービン・エンジンと熱交換機、エンジン排気誘導ダクト、冷却器送風ファン、トランスミッションが一体化され、パワーパックを構成している

M1A1戦車の内部(前ページと同じもの)(Illustration:坂本 明)[クリックで拡大可]

バッフルプレート
車長……戦車全体の指揮を執る。車長が小隊や中隊の指揮官の場合は、部隊の指揮も執る
砲塔バスケット……戦闘室の床面で砲塔とともに回転する構造になっている
装填手……主砲に砲弾を装填することが主務。また車載機銃の操作や通信機の操作も行なう
砲弾ラック
砲手……主砲の操作を行なう。敵戦車や攻撃目標に照準を付け、砲を発射する
砲手用照準装置および砲/砲塔コントロール・ハンドル……ハンドルを操作することで、砲手はレーザー測距装置の発振や照準操作、砲・同軸機銃の射撃、砲塔の旋回などが行なえる
旋回リング……砲塔を旋回させるためのレールリング
操縦手……戦車を操縦する
操縦装置
履帯張度調整装置
誘導輪……履帯を円滑に回転させるための輪で、履帯張度調整装置を伸縮させることで誘導輪をわずかに動かして履帯の張度を調節できる。また誘導輪と転輪は同じものなので互換性がある。ちなみにイラストには描いていないが、履帯を円滑に回転させる装置として第1と第2および第5と第6転輪の間に上部転輪が設置されている
車体前部装甲ボックス

脚注

  1. 菅軸・外歯噛合式……起動輪の中央が終減速機に取り付けられるように管状になっており、起動輪の両側に付いたスプロケット(歯車)に履帯のコネクター(履帯を連結する部品で、履帯の両外側に取り付けられる)が噛み合うことで、履帯が回転する方式
  2. 嵌合……軸と穴がはまり合っていること

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ABOUT US
坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。