第3回 戦車砲のメカニズム(1/3)──イラストで見る砲のパーツ 
連載「戦車の戦い方」

駐退復座機──発射の衝撃を吸収する

砲弾を発射すると、弾体は装薬によって大きなエネルギーを与えられて飛行していくが、当然、その反作用として砲自体を後方へ押し出そうとする大きな力(反動)が働く。この力は火砲の口径や使用する砲弾の種類によって異なるが、ほぼ50トン以上の力になるといわれる。

それだけ大きな力が生じると戦車には大きな負担がかかり、特に砲塔と砲の接合部(砲耳部)を破損させてしまうことになりかねない。また後退しようとする力は砲を大きく動かして、射撃精度を悪くするという問題もある。

そこでこの力を吸収し、後退しようとする砲を前へ押し戻してやるための装置が必要となる。それに用いられるのが駐退復座機で、砲弾を発射した反動を砲身のみを後退(後座)させることで吸収軽減する駐退機と、後退した砲身を油圧やスプリングによって元の位置に押し戻す働きをする復座機を一体化した構造になっている(後退した砲が元の位置に戻る動きを「復座」という)。

M1A1/A2戦車に搭載されている44口径120ミリ滑空砲M256の駐退復座機の構造。揺架の中に駐退復座機が組み込まれたような構造になっている。砲身の周囲には筒状の揺架が取り付けられており、砲身は揺架を介して前後に動くことができる。
揺架の内部に入っている砲身の周囲にはリコイルスプリングが取り付けられ、それをピストンと呼ばれる突起が付いたアダプターで押さえている(アダプターは砲身の周囲に取り付けられている)。
砲弾を発射した反動で砲身が後退すると、ピストンがリコイルスプリングを押し縮めることで衝撃を緩衝し、リコイルスプリングの復原力で後退した砲身を元の位置に戻すようになっている。砲身の後端に取り付けられた閉鎖機は砲身とともに前後に動く
(Illustration:Akira Sakamoto)

砲身への駐退復座機の取り付け方には、①砲身の周囲に取り付ける方法と、②砲身の下や横に取り付ける方法とがある。前者は同心式といい、装置の占める容量を小さくすることができるためスペースの限られる戦車に装備するには最適で、多くの戦車に装備されている。

だが、この方式では吸収できる力に限度があるため、大口径砲の場合は後者が用いられる。砲身の下や側面に油圧シリンダーや復座スプリングを取り付ける方法は加農砲(カノン砲)などの駐退機としてよく使われるが、戦車砲でも口径が大きい砲の場合にはこちらを使用することが多い。

加農砲や榴弾砲などの場合は、砲砲身の下に揺架(中に駐退復座機を内蔵)を備えているケースも多い。写真は第二次世界大戦などで使用されたソ連のML-20 152ミリ榴弾砲(Photo:Balcer)

ちなみにM1A1/A2戦車では44口径120ミリ滑空砲M256を搭載しているが、原型のラインメタル120ミリL44を改造し同心式にしており、砲が12%ほど軽量化した。

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坂本明軍事ライター、イラストレーター
(さかもと・あきら)
長野県出身。東京理科大学卒業。
雑誌「航空ファン」編集部を経て、フリーランスのライター&イラストレーターとして活躍。
著書に『最強 世界の歩兵装備パーフェクトガイド』『最強 世界のジェット戦闘機図鑑』『最強 自衛隊図鑑』『世界の軍装図鑑』(学研プラス)など多数。
1/28に最新刊『最強 世界の空母・艦載機図鑑』(ワン・パブリッシング)を出版。