駐退復座機──発射の衝撃を吸収する
砲弾を発射すると、弾体は装薬によって大きなエネルギーを与えられて飛行していくが、当然、その反作用として砲自体を後方へ押し出そうとする大きな力(反動)が働く。この力は火砲の口径や使用する砲弾の種類によって異なるが、ほぼ50トン以上の力になるといわれる。
それだけ大きな力が生じると戦車には大きな負担がかかり、特に砲塔と砲の接合部(砲耳部)を破損させてしまうことになりかねない。また後退しようとする力は砲を大きく動かして、射撃精度を悪くするという問題もある。
そこでこの力を吸収し、後退しようとする砲を前へ押し戻してやるための装置が必要となる。それに用いられるのが駐退復座機で、砲弾を発射した反動を砲身のみを後退(後座)させることで吸収軽減する駐退機と、後退した砲身を油圧やスプリングによって元の位置に押し戻す働きをする復座機を一体化した構造になっている(後退した砲が元の位置に戻る動きを「復座」という)。
砲身への駐退復座機の取り付け方には、①砲身の周囲に取り付ける方法と、②砲身の下や横に取り付ける方法とがある。前者は同心式といい、装置の占める容量を小さくすることができるためスペースの限られる戦車に装備するには最適で、多くの戦車に装備されている。
だが、この方式では吸収できる力に限度があるため、大口径砲の場合は後者が用いられる。砲身の下や側面に油圧シリンダーや復座スプリングを取り付ける方法は加農砲(カノン砲)などの駐退機としてよく使われるが、戦車砲でも口径が大きい砲の場合にはこちらを使用することが多い。
ちなみにM1A1/A2戦車では44口径120ミリ滑空砲M256を搭載しているが、原型のラインメタル120ミリL44を改造し同心式にしており、砲が12%ほど軽量化した。
装薬のことを炸薬と書かれているのが気になりました