防楯、サーマル・シールド、エバキュエーター
大砲を保持して砲塔に取り付けているのが砲架だが、一般的な戦車砲の場合、駐退復座機を揺架(連動砲架)に組み込んで砲塔砲耳に取り付けられる。砲の上下動は砲架に取り付けられた高低装置(M1では高荷重型テーパー・ローラー型ベアリング)で行なわれる。ここには直接照準器や同軸機銃が取り付けられる。
防楯は砲塔の前部分を保護する目的を持ち、砲とともに連動する。M1では防楯は溶接構造となっており、二重装甲を用いより強力になっている。
砲身の曲がりを防ぐために、砲身にはサーマル・シールドが巻き付けられ覆われている。大砲を連続して撃つと砲身は加熱して非常な高温となるが、このときに雨や雪、直射日光といった自然の影響を受けると砲身はわずかながら曲がってしまう場合があるためだ。砲身がわずかでも曲がってしまうと、撃った弾は命中しない。
布装と金属製とがあるが、M1は金属製。金属製のものは砲身との間に空間を設け、砲身の放熱効果を高めるとともに、外気の影響を受けにくくしてある。
砲身の中間に、一段太くなった筒状のものが付いている。これはエバキュエーター(暗煙器)で、砲を撃った時の高圧高温ガスが戦闘室内に吹き返してくるのを防ぐためのものである。
原理は、装薬の爆発とともに発生するガスをエバキュエーターのチャンバー内にためておき、弾丸が砲口を飛び出すとともに内部のガスを砲口の方へ吹き出し、さらに砲身内に残ったガスも外へ吸い出してしまう。
連載「戦車の戦い方」第3回 戦車砲のメカニズム(1/3)─終─
装薬のことを炸薬と書かれているのが気になりました