長射程なら大口径が有利
また射程によっても貫通力は変わってくる(当然のことだが)。射程が短い場合に貫通力を向上させるには、①口径を大きくする、②砲身を長くする、のいずれかの方式でも効果がある。
しかし射程が長い場合は、小口径の高速弾よりも、大口径で低速弾の方が貫通力が大きくなる。それは貫通力低下が少ないためだ。
貫通力低下とは、弾体が飛行していく際に空気抵抗によって威力が下がってしまうことである。弾体の断面積は直径の2乗に比例し、重量は3乗(体積)に比例する。飛距離あたりの弾体の速度低下は「断面積÷重量」の比で増大するといわれ、このため弾体の直径が大きくなれば「断面積÷重量」の比は小さくなり、速度低下も小さいということになる。
つまり、大口径の弾の方が飛ぶ距離の増加にともなって速度が落ちることが少ないので、貫通力が低下しないということになる。
第二次世界大戦ではドイツ軍のティーガーⅡ戦車(71口径長8.8cm戦車砲)を開発し、これに対抗するためにソ連軍がKV85(85㎜戦車砲)、IS2(122㎜戦車砲)などを出現させるに至った。
こうした重戦車の任務は遠距離から敵戦車を撃破し、味方の中戦車の活動を支援することにあるのは前にも記したが、これが「大口径弾の方が距離の増大にともなう貫通力の低下が少ない」ということを示している。実際、大戦中の大口径化にともなって、交戦開始距離が伸びたといわれている。
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