滑腔砲のメカニズム──APFSDS弾を高速で発射できる
ところで滑腔砲とは砲腔内にライフリングが刻まれておらず、内部はただ穴が空いている状態になっている(抵抗がないように研磨されている)。
当然ながらライフリングがないので、砲弾は回転せずに撃ち出され、回転による安定は得られない。そのため砲弾にフィン(安定板)が取り付けられている。
滑腔砲の利点はAPFSDS弾を高速で発射できることである。長いダートのような弾体を持つこの砲弾は、(運動エネルギーを)同じ重量のAPDS弾が戦車の装甲に与える運動エネルギーよりも小さな面積に集中することができるので、貫通力が大きい。
APFSDS弾は弾体にフィンを持つので回転させて安定を保つ必要がない。発射時はサポと呼ばれる装弾筒によって砲腔内では支えられるため、砲身内にライフリングを刻む必要がないのである。
また、滑腔砲はライフリングを刻んでいないために弾体に与える抵抗が少なく、弾体の初速度が速くなるといわれている。さらに、ライフル砲のように砲弾を発射するたびに弾体がライフルの刻みを削り取ることがないので、砲身寿命が長い。砲の重量もライフル砲に比べ、軽量化が可能だ。
近年、ライフル砲も発展しているが……
もっとも現在では、APFSDS弾のような翼安定弾もスリッピングバンドと呼ばれる技術の開発により、ライフル砲から発射できるようになっている。
滑腔砲では翼安定弾しか発射できないが、ライフル砲では翼安定弾以外の多種の砲弾も発射できるので、使用できる砲弾の種類が限定されないという利点があり、砲弾の平均コストも安いという利点もある。
しかし現在では、滑空砲が主流になっている。
なぜなら、繰り返すが戦車砲の装甲貫通力を高めるには、一般的に、①小口径あるいは砲身の長い砲で初速度を高めて砲弾を撃ち出すか、②初速度を変えずに口径を増大して弾径の大きい砲弾を撃ち出す方法があるが、二つのうち比較的に容易なのが後者で、特殊な加工の必要がない滑空砲は大口径化が容易だからだ。
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