第2回 M1戦車のアキレス腱(下)──過大な重量 
樋口博士のミリタリー雑論

冷戦終結が新戦車への更新を遅らせた

以上のとおり、劣化ウラン装甲を導入して重量が大幅に増えたことが、現M1戦車のアキレス腱の一つになっている。これに対して一部の読者は、「M1と並んで西側の代表的戦車であるレオパルト2も重量が増えているではないか」と感じたことだろう。

モジュール装甲などを装備したレオパルト2A7戦車(Photo:Boevaya mashina)

たしかにレオパルト2も、初期型のA4の55.1tからA6では61.7tに増加している。戦車の重量が軽くなったのは、90式戦車の50tから10式戦車の44tに減少した日本くらいである。

軍事情勢の変化や対抗兵器の進化によって、戦車にもどんどん新しい機能が求められていく。それに対して、日本のように戦車のモデルチェンジをせずに、既存車両に次々と機能を付加していけば、重量が増えていくのは当然だ。

(クリックで拡大可)

いろいろ付け足してゴテゴテになった外見をカッコいいと評価する方もいるが、私に言わせれば「老婆の厚化粧」にすぎない。要するに、長年にわたりM1やレオパルト2を使い続けていることが問題の本質である。

本来であれば、2000年代にはM1やレオパルト2の後継が登場したはずだが、冷戦が終結したことで浮かれ、新型戦車の開発作業をストップしてしまったのである。

ロシアのT-14戦車の登場を受けて、西側諸国でもようやく新型戦車の開発を再スタートしたが、これほどブランクが開いてしまっていては、まともに開発できるかどうか疑問と言わざるを得ない。

 

今回の教訓治に居て乱を忘れず

連載「樋口博士のミリタリー雑論」第2回─終─

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樋口晴彦
(ひぐち・はるひこ)
1961年生まれ。1984年に東京大学経済学部卒業。1994年にダートマス大学 Tuck School でMBA、2012年に千葉商科大学大学院政策研究科で博士(政策研究)取得。
警察庁・外務省・内閣安全保障室等に勤務し、オウム真理教事件・ペルー大使公邸人質事件・東海大水害などの危機管理を担当。現在は、企業不祥事の分析を通じて、組織のリスク管理と危機管理を研究。
著書に、『組織行動の「まずい!!」学──どうして失敗が繰り返されるのか』(祥伝社)、『なぜ、企業は不祥事を繰り返すのか』(日刊工業新聞社)、『本能寺の変──新視点から見た光秀の実像と勝算』『信長の家臣団【増補版】──革新的集団の実像』(パンダ・パブリッシング)など多数。