冷戦終結が新戦車への更新を遅らせた
以上のとおり、劣化ウラン装甲を導入して重量が大幅に増えたことが、現M1戦車のアキレス腱の一つになっている。これに対して一部の読者は、「M1と並んで西側の代表的戦車であるレオパルト2も重量が増えているではないか」と感じたことだろう。
たしかにレオパルト2も、初期型のA4の55.1tからA6では61.7tに増加している。戦車の重量が軽くなったのは、90式戦車の50tから10式戦車の44tに減少した日本くらいである。
軍事情勢の変化や対抗兵器の進化によって、戦車にもどんどん新しい機能が求められていく。それに対して、日本のように戦車のモデルチェンジをせずに、既存車両に次々と機能を付加していけば、重量が増えていくのは当然だ。
いろいろ付け足してゴテゴテになった外見をカッコいいと評価する方もいるが、私に言わせれば「老婆の厚化粧」にすぎない。要するに、長年にわたりM1やレオパルト2を使い続けていることが問題の本質である。
本来であれば、2000年代にはM1やレオパルト2の後継が登場したはずだが、冷戦が終結したことで浮かれ、新型戦車の開発作業をストップしてしまったのである。
ロシアのT-14戦車の登場を受けて、西側諸国でもようやく新型戦車の開発を再スタートしたが、これほどブランクが開いてしまっていては、まともに開発できるかどうか疑問と言わざるを得ない。
今回の教訓治に居て乱を忘れず
連載「樋口博士のミリタリー雑論」第2回─終─
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