アラート時、戦闘機はどのような状態か
5分待機、30分待機、1時間待機1などあるが、5分待機がスクランブルで上がれば瞬時に30分待機が5分待機に、1時間待機は30分待機へ繰り上がる。なので待機となれば、すべての点検とINSのアライン2と兵装を完了していて、機体状態は基本的に変わりない。
アラート待機に就く機体の形態は、センターライン600GAL燃料タンク(沖縄はウィングタンク2本)にSRM(short-range missile:短距離ミサイル)と20ミリの実弾。状況により、さらにMRM(middle-range missile:中距離ミサイル)が追加される場合もある。
中部航空方面隊は冬季に小松基地が雪と雷で上がれなくなることが多いために、(列島をまたいで)日本海での対領空侵犯措置を行なえるよう百里のアラート待機は3タンクで行なう。
兵装の搭載は基本的に人員に余裕のある通常の列線で行なわれ、兵装完了後にアラートハンガーに入る。もっとも、すでにアラートハンガーに入っている機体のミサイル交換や、課業時間外で列線に余裕がないときなどにアラートハンガーでも作業できるように、機材は一式装備されている。
20ミリ弾を給弾するために必要なコンプレッサーエア3も、アラート格納庫施設に付随するコンプレッサーから格納庫内に供給されている。牽引式グランドクーラー4も格納庫脇に2台常駐させてあり、電源は格納庫内に引かれている。
通常は一般の基地外から供給される電源だが、非常時には基地内の発電機から供給され、それも不可能の場合には格納庫施設にある自家発電機で供給可能である。(JFSがある)F-15では使用しないが、F-4のエンジン始動用のエアホースも1機に対して2本用意されていて、このエアも兵装に使用するエアと同じコンプレッサーから供給される。
百里のアラートハンガーのドアは横移動式で、電源消失やモーターの故障によってドアが開けられずに発進できないという事態を防ぐために、重りの力でワイヤーを引っ張って開ける機械的な構造になっている。
閉めるときはそのワイヤーをモーターでリールに巻き取って閉めるという方式のため、開けるときは速く、閉めるときはゆっくりと遅くなる。開くときにはもちろん、閉める場合も何かが挟まったときの緊急停止装置などない。そのため、過去に百里ではないが、閉める際に整備員がドアに挟まれて死亡した例もあり、どちらの場合も危険なので作動中はドアへの接近は禁止となっている。
脚注
- 1時間待機……通常は1時間待機の機体は設けない。増強がかかった場合など、必要なときに準備をすることになる
- INSのアライン(アライメント)……INS(Inertial Navigation System:慣性航法装置)の出発点における初期情報を与える作業。機械式ジャイロの場合、回転が安定するまでに、機体を停止させた状態で数分待つ必要がある。そのため、この入力作業を先に終わらせておくことで、エンジンスタート後に速やかに発進することができる
- 20ミリ弾を給弾するために必要なコンプレッサーエア……20ミリ弾の給弾では、ドラム内にベルトコンベア式に送り込む。その機構を動かすためにインパクトレンチ(インパクトドライバー)のようなものを使うのだが、それを動かすためにエアが必要となる(後の回で解説します)
- 牽引式グランドクーラー……整備作業のためにエンジンのエアコンを使わずに電子機器を作動させる場合、高温にならないように冷風を入れるためのもの。日本ではほぼないが、極寒の天候下では温風を入れる場合もある(後の回で解説します)
日本の空の守り、スクランブルがどのように維持されているか、貴重な実態を知ることができました。戦闘機を万全に整えることの大変さは想像以上で、恐れ入りました。
コメントありがとうございます。
引き続き面白いと思ってもらえる記事をお届けできればと思います。
お疲れ様です。
私は2→7と勤務していたAPGでした。
2の頃は203、7の頃はdockです。
記事を読み、懐かしさが込み上げております。
これからも、良い記事を宜しくお願い致します。
コメントありがとうございます!