スクランブルがかかるとアラート勤務者以外も大忙し!?
この際にパイロットが交代することもあるので、(その整備した機体が)5分待機になるのか30分待機になるかはケースバイケースになる。第1回でも書いたが、5分待機の機体も30分待機の機体も機体の状態としては同じだ。5分待機と30分待機で、パイロットの場合は装具(Gスーツなど)をすべて着用するかどうかの違いはあるが、機体は整備員からするとどちらが先に上がることになっているかくらいの違いでしかない。
EPO中は当然(格納庫の)反対側にある2機が5分待機となっているので、EPOの最中にスクランブルがかかった場合はそちらを上げる準備を優先する。つまりEPOを即中断して、反対側の格納庫に走ることになる。
何事もなければハンガーのドアを閉めて待機室に戻り、課業時間中であれば飛行隊の整備統制班に航空機状況と待機状況を報告してやっと一息、といった流れを繰り返すのがアラート待機である。もちろん続け様にスクランブルがかかるときには一息つく暇もないのだけれど。
機体にトラブルがあって入れ替えをしなければならないときや、スクランブル機が領侵機(領空侵犯機)を撮影して戻ってきたときなど、昔はフィルムを現像しプリントした写真を航空総隊司令部までT-33AやT-4で運ぶなどということもしていた。アラート待機は飛行隊だけが目立つようだが、飛行場を運用する部署も整備を担当するそれぞれの特技セクションすべてが動いて初めて機能するものだ。
そのため、いざ何かあったときにはその場を動けないアラートハンガー(待機所)で待機をする隊員よりも、通常業務をこなしながらバックアップをしなければならない待機外の隊員の方が実はスクランブルがかかったときには忙しかったりする。多くの隊員たちのチームワークで対領空侵犯措置は行なわれているのである。
次回は、アラート待機のF-15とF-4の違いなどを話したいと思う。
連載「元F-15機付長が語る 戦闘機整備員の世界」第2回─終─
現場の状況が見えるような記事で非常に興味深く読ませていただいております。順調に連載されることを期待しております。
コメントありがとうございます。
編集部の都合で思うように編集・更新が進んでいませんが、なるべくコンスタントに続けていけるように努力したいと思います。
今後ともよろしくお願いします。