手間がかかる奴ほど愛おしい!?─整備員から見たF-15とF-4の違い

タイヤ交換もF-4は重労働

アラート待機に直接関係ないが、前回十分な説明ができなかったタイヤの話に移る。F-15のメインホイールはセンターにあるナットで主脚に固定されている。

タイヤ交換の際はこのホイールごと交換する。これは基本的に自動車の場合と大差はない。ブレーキは4ローター、5ピストンのカーボン素材のディスクブレーキで、今は自動車でもポピュラーになったアンチ・スキッド(ABSのこと)を備えている。

車輪部分をジャッキで持ち上げ、センターのナットを回して外し、タイヤを外した際の写真(Image:YouTube「航空自衛隊チャンネル」動画のスクリーンショット。画像クリックで動画へ移動)

ホイールを外す際は、センターのアクスルナットを外してホイールを引き出すだけで外れる。むき出しになったブレーキディスクを点検し、新しいタイヤに換えたホイールを付け、アクスルナットを取り付ければ完了、となる。

専用の機械でタイヤからホイールを外している際の写真(Image:YouTube「航空自衛隊チャンネル」動画のスクリーンショット。画像クリックで動画へ移動)

文字で書き出せば至って簡単な構造だが、タイヤを交換するのは飛行して帰ってきてすぐの機体になるので、熱いうえに重いので、実際にはそれなりに重労働で危険が伴う作業である。


一度F-4からF-15に転換すると、もうF-4には戻れない

ところがそれより厄介なのがF-4で、F-4EJ、F-4EJ改、RF-4Eを含むF-4Eシリーズは何故かホイールを主脚に固定するボルトがブレーキの奥にある。そのためホイールを交換する際にブレーキのローターディスクとステーターディスクを全部外さないと交換できないという面倒な構造になっている。

このためホイール交換に要する時間がF-15に比べると2〜3倍(30〜40分)もかかる。F-4の場合でも当然飛行後に交換することが多く、高熱のディスクを1枚1枚外すことになるため、熱傷を負わないように慎重に作業しなければならず、余計に神経を使うことになる。

外したディスクは反りがないかをチェックし、規定を超えたディスクは交換する。新しいホイールをつけてディスクを元に戻し、ディスクを固定するボルトを締めてセイフティワイヤーをかけ、タイヤ交換が完了する。

F-16のタイヤ交換を行なう米空軍の整備員。右手で触れているのがディスクブレーキで、パッドで両側から押さえつけて回転を止める仕組み。車だと通常1枚だが、航空機の場合はより制動力を高めるために多段式となっている(Image:U. S. Air Force)

私は204飛行隊の前は301飛行隊に所属しており、F-4で戦闘機整備の基礎を学んだ。そのためこの面倒なホイール交換を苦に思っていなかったが、F-15に転換してからはとてつもなく面倒に思える作業になった。慣れというものは怖いもので、よくF-4からF-15に転換するとF-4に戻れないと言われたものである。

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渡辺悟志元航空機整備員(航空自衛隊)、イラストレーター
(わたなべ・さとし)
F-15J/DJ、F-4EJの航空機整備員として2002年まで航空自衛隊第7航空団飛行群に22年間勤務し、機付長から同乗検査員、フライトチーフまでを歴任。整備経験のある機種はF-104J、F-1、T-33A、T-2、T-4。
航空機整備の傍、イラストの特技を生かして204飛行隊マークデザインや、パッチ等グッズデザイン、ミスティックイーグルなどの戦技競技会特別塗装、204飛行隊F-15改編10周年塗装などの記念行事特別塗装などを多く手がける。
現在はフリーイラストレーター/グラフィックデザイナーとして、ミリタリー以外のジャンルでも精力的に活動中。