整備員は朝6時半からフル稼働!─通常訓練のプリフライトチェック

武装の搭載──3人で運ぶが、背が低いと大変かも!?

機体のPRを行なっている間に、後方部分が青色に塗られたSRM(短距離ミサイル。AAM-3やAIM-9などのIR[赤外線誘導]ミサイル)のキャプティブ弾(模擬弾。Captive)をアーマメント(武装特技員)が搭載する。

F-4EJ改に搭載されたAAM-3のキャプティブ弾。後方部分が青色に塗られている(Image:航空自衛隊ホームページの写真をトリミング)
右主翼の2番ステーションにAAM-3(90式空対空誘導弾)のキャプティブ弾2発、胴体下の3番にAAM-4(99式空対空誘導弾)のキャプティブ弾を装備したF-15J。青く塗装されているものは基本的にキャプティブ弾と考えられる(Image:航空自衛隊ホームページの写真をトリミング)

キャプティブ弾は推進薬や炸薬を搭載せず、シーカーなどの弾頭部分だけの訓練用ミサイルで、発射することはできないため実弾搭載前の回路チェックは必要ない。またキャプティブ弾は何度も発射をシミュレーションできるので、搭載するのは1本だけである。

SRMはそれほど重くないので人力で行なうが、翼下燃料タンクがない場合は、筆者くらいの身長(177cm)があれば踏み台がなくても搭載可能だが、3〜4人を必要とするので架台に乗って搭載するのが普通である(翼下燃料タンクが装着されている場合はランチャーの下にタンクがあるので、筆者でも台がないとランチャーまで届かない)。

英国のレイクンヒース空軍基地にて、2番ステーションに増槽をつけたF-15の2番外側にAIM-9Mサイドワインダーを搭載している整備員。3人とも体が大きそうなので、増槽を付けた状態でも手が届くのかもしれない(Image:DoD)
F-15の2番外側にAIM-9Mを搭載した後、脚立を用いて調整している整備員(Image:DoD)

搭載ステーションは2番と8番のうちどこに搭載するかは決まってはいないが、左翼の8番外につけることが多い。一方、機軸に近い内側のランチャーの方がミサイルの感知精度がいいという話もあるので、戦競のときなどは内側に搭載することが多かったように思う。

F-15のステーション番号。機体を下面から見たイラストで、画像の右側がF-15の左翼となる

なお、厳密には「ステーション」はパイロン1を取り付ける場所のことで、ステーションのハードポイント2に「パイロン」を取り付ける。そしてそのパイロンの下に増槽や、左右に「ランチャー3」をつけてミサイルを搭載することができる。

またミサイルの取り付け作業は、例えばF-15のLAU114/AランチャーにAAM-3を取り付ける場合であれば、レールに欠けている部分が2ヵ所あるので、ミサイルに2ヵ所ある突起部分を合わせ、少しスライドさせてロックする。

そしてミサイル前方にあるケーブルをランチャーのコネクタに取り付け、ノーズフェアリング4を閉じる。そしてミサイルの前方にある4枚のフィンのうち、ランチャー側の2枚を固定すれば4枚とも動かなくなるので、これで搭載完了となる。

もちろん空対空実弾射撃訓練の際は実弾を搭載するので、その際は電源車とグランドクーラーを用意するか、機体のエンジンを回して回路チェックを行なってから搭載する。なお、この場合のエンジンランはパイロットが行なう必要がある。

脚注

  1. パイロン……増槽や兵装(ミサイルや爆弾など)、エンジンなどを取りつけるための板状の支柱
  2. ハードポイント……パイロンを取り付けるために強化された部分
  3. ランチャー……パイロンの側面に武装(ミサイルや爆弾など)を取り付ける部分。レール式と射出式がある
  4. ノーズフェアリング……空気抵抗を減らすためなどの目的でミサイルの先端に被せる部品(殻)。nose fairing

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ABOUT US
渡辺悟志元航空機整備員(航空自衛隊)、イラストレーター
(わたなべ・さとし)
F-15J/DJ、F-4EJの航空機整備員として2002年まで航空自衛隊第7航空団飛行群に22年間勤務し、機付長から同乗検査員、フライトチーフまでを歴任。整備経験のある機種はF-104J、F-1、T-33A、T-2、T-4。
航空機整備の傍、イラストの特技を生かして204飛行隊マークデザインや、パッチ等グッズデザイン、ミスティックイーグルなどの戦技競技会特別塗装、204飛行隊F-15改編10周年塗装などの記念行事特別塗装などを多く手がける。
現在はフリーイラストレーター/グラフィックデザイナーとして、ミリタリー以外のジャンルでも精力的に活動中。