F-16を無人機で置き換える!?
一方で、旧式のF-16(Block25/30/32)などの戦闘機を何で置き換えるかの検討が始まっている。「Defense News」<font size="2">(2020年3月4日付)</font>によれば、候補の一つとしてXQ-58 バルキリーのような無人機があるとしていた。
さらに、米空軍教会ミッチェル研究所のマーク・ガンジンガー大佐(退役)らもレポートで、XQ-58のような低価格で損耗が許容される中距離無人機をF-16と比べている。レポートでは、安価な無人機の有利な点を指摘しており、このような無人機がフォースマルチプライヤー(force multiplier:戦力倍増兵器)になるとして、有人戦闘機と共に戦う可能性が示されている。1
他方、ブラウン大将は、古くなったF-16の後継機として全く白紙状態から4.5世代航空機(もしくは第5世代未満機)が製造できるようになることを望んでいると話していたが(※1)、同時に、将来の戦闘飛行隊への無人機の導入も意識している。
(※1)2021年1月に古いF-16の後継機の候補として新しいF-16がありえるとしたウィル・ローパー空軍次官補の発言に対し、ブラウン大将個人はそれを支持せず、白紙状態から新しい機体を開発したいと述べた。
「TacAir」研究──未来の戦闘機隊の構成を考える研究
ブラウン大将によれば、米空軍はこれから、「TacAir」と呼ばれる研究を始めようとしているところだ。この研究は、米空軍が今後10〜15年先の戦術戦闘機の構成をどうするのが正しいかを検討しようとするものだ。<font size="2">(「Air Force Magazine」2021年2月17日付)</font>
この研究は、新しい4.5世代機とともに、戦闘飛行隊に無人機を導入するかどうかの検討も含まれる。
ブラウン大将は、記者会見でレポーターたちを前に次のように話している。
「我々が話し合っていることの一つは、将来の戦闘飛行隊がどのようなものになるかということだ」
「どれくらいの有人機と無人機が、飛行隊に必要になるだろうか?」(数や比率)
「今のところ、私にその答えは分からない。それは今後の研究で検討しなければならない分野だ」
(「National Defense Magazine」2021年2月25日付)
ただし、「TacAir」研究はF-35そのものを置き換えることを調査するものではないと、ブラウン大将は話している。また、これまで何人もの空軍高官が、予定しているF-35の調達数を変えないと発言してきている。
F-35に対して否定的な意見がないわけではないが(※2)、たとえ、F-35の調達数が一部変わったとしても、F-35の大多数がごっそりと無人機に置き換えられる可能性は今後かなり長い期間ないだろう。あくまでアメリカ空軍の戦闘機戦力の土台は有人機のF-35である。
しかし、無人機が有人機とチームを組んで使用される可能性は、後の回で解説するNGAD計画やマルチドメインバトル、モザイク戦のような複数の構想や研究によっても提示されている。
(※2)現在、F-35の調達で問題になっているのが運用コストの高さだ。「TacAir」研究は米空軍だけではなく、米国防総省のコスト査定プログラム評価室(CAPE)によっても行なわれる。そのメンバーには、空軍と違ってF-35に否定的な人々がいると言われている。また、2001年以来、空軍は公式に旧式のF-16をF-35で置き換えるとしていたが、それも現在では当てはまらない。
脚注
- Mark Gunzinger, Lukas Autenried, "Understanding the Promise of Skyborg and Low-Cost Attritable Unmanned Aerial Vehicles", Mitchell institute,2020.9
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