2030年も航空優勢を確保するための研究
2015年頃に米空軍が各分野の専門家たちを集めて、2030年以降の非常に競争的な環境においても航空優勢を確保するために何が必要かを研究してまとめた「航空優勢2030年飛行計画(Air Superiority 2030 Flight Plan)」というレポートがある。
研究では、2030年の航空優勢に関して14の組織からの220もの違った新規構想について、1,500以上もの提案を詳細に検討したという。なお、2016年には機密扱いされていない公開版1がリリースされている。
この研究でも、「一つの能力で、銀の弾丸(万能の解決策)を提供できるものは存在しない」としている。「航空優勢2030」では、一連のシステムと共に、次世代戦闘機に相当するものとして「PCA(Penetrating Counter-Air)システム2」が記載されていた。
2018年12月に米議会予算局(CBO)は、PCA 1機あたりの平均価格は約3億ドルになるだろうと予想した3。議会予算局の見積もりは、PCAがF-22やF-35のような単一のプラットフォームであるということが前提だった。
「航空優勢2030」では、依然として、一群のシステムの中でも特別な存在としてPCAシステムが重視されていた。この頃には、米国の大手航空機メーカーである、ボーイングやロッキード・マーティン、ノースロップ・グラマンなどが、よく似た第六世代戦闘機のコンセプトを公開している。
これらのコンセプトでの第六世代機の特徴は、大型で、多くが垂直尾翼をもたず、超音速で、非常にステルス能力が高い。そして時にはレーザーのような自己防衛用の兵器を持っていた。
ゴールドファイン大将は、2019年にPCAについて指摘している。「PCA航空機を従来のように、それ自身だけで非常に広範囲の任務を行なえる単一のプラットフォームだと考えるのは、もはや当てはまらない」(「Aviation Week」Web版、2020年9月21日付)
脚注
- Enterprise Capability Collaboration Team, U.S. Air
Force, "Air Superiority 2030 Flight Plan", Department of Defense,2016.5 - PCAシステム……「敵の防空能力内に侵入する制空」システム。米空軍関係者が使うペネトレイティング(Penetrating)という言葉は、スタンドオフの対義語で、スタンドインとほぼ同じ意味。つまり、敵の防空能力の有効射程内に侵入して活動できる機種のことになる。B-52がスタンドオフ爆撃機なら、B-2はペネトレイティング爆撃機となる
- Edward Keating, David Arthur, and Adebayo Adejeji, "The Cost of Replacing Today’s Air Force’s Fleet", Congressional Budget Office,2018.12
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