第3回 次世代戦闘機は1機種ではなく、「システムの一群」!? ──次世代機はどんな機体になるか

未来を予測して開発するスタイルは時代遅れ

ウィル・ローパー空軍次官補は「航空優勢2030」の研究を、空軍の限られた範囲内だけのものであり、調達のことが考慮されてないと批判した。NGADについて、代替手段の分析の研究にさらに2年、その後さらに延長された2年の代替案の研究にもかかわらず、ローパーはまだ空軍が正しい戦略に到達したとは考えなかった。

従来の空軍の運用計画者たちは、そのような分析結果に基づいて将来の兵器システムに必要とされる複雑な一連のものを高度な技術でつくることになる。しかし、ローパーは、そのようなやり方を「認識が甘い(ナイーブ)」と批判した。

ローパーは、米国は次世代戦闘機計画に乗りだす前にその調達政策を停止して考え直す必要があると主張した。彼のアイデアは、F-22やF-35のような1機種の戦闘機に多額の投資をする代わりに、米空軍は異なったスペックや能力を持った多様な航空機を生みだす計画に投資するほうがいいというものだった。

ローパーによれば、後の回で解説するデジタル・エンジニアリングによって米空軍は、それぞれの任務で微妙に異なる分野に最適化された一連の航空機を製造できるだろうという。例えば、最新の兵器システムを装備した1機だけの航空機、もしくは超長距離照準システムを装備した1機だけの航空機、といったようにカスタムメイドの機体をつくれるようになるという。(「Breaking Defense」2020年11月17日)

デジタルエンジニアリングを利用することで、小さな変更が機体にどのような影響を与えるかを理解できるという(Image:Raytheon Intelligence & Space)

さらにローパーは「2030年の脅威が予測できないことを受け入れなければならないと思う」と主張し、「航空優勢2030」チームの考えは冷戦時代のやり方だという。その時代は脅威を予測し、それを打ち負かすシステムを設計していた。

ローパーはこのような冷戦時代のやり方を支持しなかった。将来はあまりに変化するものであり、このような不確実なものから、首尾一貫したものを抽出して1機の戦闘機の設計に落とし込むのは無理がある、と言う。

常に進歩しつづける世界の安全保障環境で、革命的な俊敏さが必要だとローパーは主張する。さらに「今日の世界では、私たちは俊敏である必要がある」「未来の可能性はあまりにも多すぎる。敵を倒すために一つだけを選んで戦力を形成することはできない」「未来がどうなるかは分からない」と続ける。

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