次世代戦闘機はどんな形になるか
また、次世代戦闘機の他の意見として最近でもしばしば見るのが、従来の戦闘機とはかなり違っているかもしれない、というものだ。どんな戦闘機になる可能性があるのか?
示唆されている一例をごく単純にいうと、航続距離やペイロードを伸ばすために大型化するという主張だ。当然だが、大きな航空機は小型機よりもより多くの燃料を積むことができ、航続距離を長くしやすいし、ペイロードも大きくしやすい。
月刊「軍事研究」(2018年2月号)の拙稿「ノースロプ・グラマン『B-21 レイダー』」では、新型のステルス爆撃機B-21が無人機とチームを組み、制空戦にも使用される可能性があることを紹介した。引用したのは2015年に公開されたCSBA(Center for Strategic and Budgetary Assessments)のジョン・スティリオンによる論文1だった。
軍事分野の研究はまさに日進月歩で変化が激しいが、スティリオンの主張は新しい研究によって一部が修正されながらも、根本的な部分では最新の米空軍の思想にも受け継がれ続けているように窺える。
将来、大型機が空戦で有利になるかもしれない理由
将来の空対空戦で大型機が有利になる可能性があることについて、ごく簡単に説明する。
戦闘機同士の戦いでは、時代が新しくなるにつれて長距離(視程外)の戦いが増えており、短距離(視程内)での格闘戦は減っている。今後、空対空戦闘で格闘戦がなくなり、長距離から戦うことが一般化するとすれば、従来の戦闘機に必要とされていた高速(加速性能)や、近距離でのドッグファイトのための旋回能力のようなものは必要なくなる。
空戦が、近距離からのドッグファイトにならず長距離での交戦に限定されるなら、従来の戦闘機のような高速、余剰推力、旋回性能などは重要にならない。重要なのは、敵に見つかるよりも遠い距離から、敵を探知・追尾できる状況認識能力になる。
大型機は、よりかさばって電力消費量が多いが、高性能なセンサーや特殊な通信装備などを搭載できる点でも有利である。将来、レーザーのような指向性エネルギー兵器が実用になったときも、敵の航空機を攻撃するためのものは、自己防衛用のものと違って非常に大きな電力が必要になるだろう。そのため、当初は発電能力の高い大型機に搭載されることになるだろう。
第3回で紹介した議会調査局のレポート2では、次のように書かれている。
「B-21のような大きなサイズの航空機は戦闘機のように空中戦闘機動ができないかもしれない。しかし大型の航空機は指向性エネルギー兵器を搭載するかもしれない。大型機の複数のエンジンは、そのような兵器のための相当な電力を生み出す。それにより、敵が飛ぶことのできない広大な空域を確保できるかもしれない。それは航空支配である」
たとえば、ウィル・ローパー空軍次官補(当時)も2020年9月に、一つの選択として、次世代戦闘機が大型機になる可能性を示唆している。(「Breaking Defense」2020年9月14日付)
脚注
- John Stillion, "Trends in Air-to-Air Combat: Implications for Future Air Superiority," Center for Strategic and Budgetary Assessments, 2015
- Jeremiah Gertler, “Air Force Next Generation Air Dominance Program: An Introduction,” Congressional Research Service, IF11659,October 5.2020
コメントを残す