整備員は朝6時半からフル稼働!─通常訓練のプリフライトチェック

プリフライトチェック──意外と機体下面の点検が大変、、、

駐機ポイントに出された機体は、まず前日までの機体の状況をFORM(整備記録)で確認し、前日に故障などがあった場合の修復状況や、燃料・酸素の補給状況、暦日による追加点検項目1がないかどうかなどを確認して、PRを行なう。

点検項目は技術指令書に定めてあり、現場で見ながらチェックできるように整備員各自がハンドブック2になっているものを携帯している。これはアラートで実施する場合も同じである。

各部の目視・触手点検をしつつ、必要な場合は燃料やオイル類(エンジンオイルを除く)、液体酸素を補給し、タイヤの空気圧を調整する。

スクリュー(ネジ)などはグラつく前でも緩んでくると見て分かる場合もあるし、グラついている場合は触れば分かる。また表面に薄いクラック(亀裂)などがあるときは、押して確認する場合もある。

A-10Cに液体酸素を補給し、ホースを抜こうとしているインディアナ空軍州兵の整備員(Image:U.S. Air Force)

点検は通常2人で行なうため、1人はコックピット(No.5機器室を含む)や機体上面、エンジンインテーク内、エンジン排気ノズル内(コックピットの点検はキャノピーとウィンドシールドの清掃も行なう)。そして、もう1人は下回り、といったように作業を分担して行なう。

分担が偏っているように見えるが、点検するためのアクセスドアはほぼすべて機体の下側にあり、足回りも含めて機体下面の点検項目の方が圧倒的に多いので、所要時間は下回りの方が多くかかるのが普通である。そのためクルーがもう1人追加になった場合は、下回りを2人で担当する。

ネリス空軍基地にてF-15の胴体下の配線を締めている米空軍整備兵(Image:U.S. Air Force)

先日F-2のキャノピー落下がニュースになったが、例えばキャノピーであれば、キャノピーの透明部分の傷や汚れがないか、キャノピーフレームの変形や傷がないか、キャノピーアクチュエーター(電動機部分)の漏れやヒンジ部分の緩み・破損がないか、キャノピーシール3に傷がないか、などの点検を行なう。

なおF-15の場合、PRで電源を入れて点検する項目はなく、基本的に電源車(起動車)を用意する必要はない。

脚注

  1. 暦日による追加点検項目……1週間に1回や30日に1回といった、定期的に点検を行なう箇所のこと
  2. ハンドブック……Pre-flightc check(飛行前点検)とPost-flight check(飛行後)用の膨大な点検項目が、厚さが4〜5㎝の1冊にまとめられている
  3. キャノピーシール……キャノピーフレームと機体が接触する箇所に貼られている、キャノピーを密封するためのゴム製シール

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ABOUT US
渡辺悟志元航空機整備員(航空自衛隊)、イラストレーター
(わたなべ・さとし)
F-15J/DJ、F-4EJの航空機整備員として2002年まで航空自衛隊第7航空団飛行群に22年間勤務し、機付長から同乗検査員、フライトチーフまでを歴任。整備経験のある機種はF-104J、F-1、T-33A、T-2、T-4。
航空機整備の傍、イラストの特技を生かして204飛行隊マークデザインや、パッチ等グッズデザイン、ミスティックイーグルなどの戦技競技会特別塗装、204飛行隊F-15改編10周年塗装などの記念行事特別塗装などを多く手がける。
現在はフリーイラストレーター/グラフィックデザイナーとして、ミリタリー以外のジャンルでも精力的に活動中。