第1回 弾道をどのように集中させるか

いかにFCSは生まれたかこの連載記事では、とにかく当たらない航空兵器をなんとか当てるための工夫である「航空機の照準器」の発展の歴史や、それがさらに発展して「火器管制装置(FCS)」となるまでの歴史を簡単に追いかけたいと思っております。

ただし1970年代以降のFCSは電算機のお化けであり、中で連立微分方程式を無数に解いていたりする数学のカタマリですから素人に手が出せるような世界ではありませぬ。

よってこの連載では1960年代初めあたり、世界初の本格的な誘導ミサイルであるサイドワインダー登場前後までを対象とし、その中でも私が知っているアメリカ軍の状況を中心に解説していきます。この点はあらかじめご了承願います。

陸上自衛隊武器学校に展示されている零式艦上戦闘機の九八式射爆照準器(Photo:パンダ・パブリッシング)

主翼機銃では弾道を230メートル先で集中させる

まずは機銃の時代、誘導なんてなかった時代の照準器から考えていきます。

第二次世界大戦以降の近代的な戦闘機は、複数の機関銃と機関砲を搭載していました。
ちなみに厳密な定義はありませんが、一般的に口径20ミリ未満を機関銃(Machine gun)、20ミリ以上を機関砲(Cannon)と区別して呼びます(便宜上、本稿では両方とも「機銃」と呼ぶ)。

この戦闘機の機銃はライフルやピストルのように一丁ごとに照準を付けるのではなく、全部まとめて一度に照準する必要に迫られます。

そのため機銃の弾道は必ず機体前方の一点に集中するように設定されており、その集中点に敵機を入れて撃てばタコ殴りにできるようになっていました。となると当然、照準器はその集中点を示すようにつくられます。

第二次世界大戦世代の戦闘機の場合、プロペラを撃ち抜かないように主翼に機銃を設置することが多く、その設置位置は大きく分散しています。これらの集中点を整備段階できちんと決めておき、照準器はその一点を示すように調整されました。最初にそのあたりの事情を少し見ておきます。

[図1]第二次世界大戦機の機関銃の位置

[図1]のように主翼に搭載された機銃は、パイロットの頭の位置に比べて約1メートル下方、さらにプロペラ半径の外に置くため、胴体から2メートル近く外側に置かれます。

この結果、照準をつけるパイロットの頭部とはまったく別の場所から弾が出て飛んでいくことになります。

そのままでは狙いなんてつけられないので、戦闘機の主翼の機関銃は銃身を内側やや上向きに設置し、火線(弾道)がコクピット正面前方に収束するようにしてありました。

ここらあたりは当時の整備マニュアルで見ると分かりやすいので、今回はアメリカ海軍が航空訓練生向けに制作した『Aircraft FIRE CONTROL 1944年版』から該当する部分を抜き出してみます。

[図2]アメリカ海軍が航空訓練生向けに制作した『Aircraft FIRE CONTROL 1944年版』の機関銃の向きを解説しているページ

主翼の機銃が内側を向き、前方の一点で火線が交差するようになっている点を見てください。[図2]だと750フィート先(約230メートル)で交差するように調整されていますが、機体や国ごとに距離はやや異なります。

それでも弾丸がほぼ真っすぐ飛ぶ限界距離、つまり200~350メートルあたりで交差するように設置されていると思っておけば間違いありません。

同時に操縦席と垂直方向の落差も埋める必要があるので、機銃をわずかに上向けて設置し、弾が上方向に飛んでいくようにしています。これを説明したのが[図2]下図で、銃身Bから集中点Rまで斜めに走る点線が上向きの弾道を示しています。

このように上下左右の方向を調整した結果、弾道の交差点がちょうどコクピットに座っているパイロットの正面230メートル先にくるようになるわけです。よって照準器はその点を示すように設定され、その点に敵機を捉えて引き金を引けば弾は当たる、ということになります。

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

究極の制空戦闘機F-22は、どのように生み出されたのか。その背景を、アメリカ空軍の成り立ちまで遡って考察していく1冊

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(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。