
超音速飛行を一通り堪能したら飛行場に戻る必要があるのですが、マッハ1.4以上からの減速は自動車のように簡単ではありません。危険でさえあります。
何しろスロットルを下げても自然には減速せず、勝手に燃料を盛大に消費してしまうからです。
ではどうやって減速させればよいのでしょうか。そのテクニックをご紹介しましょう。
マッハ1.4以上だと減速は困難
今回は、超音速からの減速する際のお話です。操縦しているのが車なら、アクセルから足を離してブレーキをゆっくり踏み込めば安全に減速することができますが、飛行機ではそうはいきません。
まずはアフターバーナー(AB)を切ってスロットルをアイドル(IDLE)位置まで引きます。マッハ1.4程度以下ならば、この操作により約5〜6秒でエンジン回転数は静かに落ちていきます。
しかし、それ以上の速度帯ではエンジン回転数は落ちていきません。超高速で飛んでいる状態でエンジン回転数を急激に減速させると、エンジン内の空気の流れが悪くなりエンジンタービンが溶けてしまうので、回転が落ちないようになっているからです。
また、回転数が落ちないだけでなく、エンジンがその回転数を維持するための燃料が流れ続けます。そのため、減速を得ることができないだけでなく、AB時ほどではないですが、MIL(ミリタリー推力。通常レンジの最大出力部分)でエンジンを回していることになって膨大な量の燃料を消費しつづけることになってしまいます。
そこで、スピードブレーキを使用します。
スピードブレーキは機種によってその位置や作動方法は異なりますが、いずれの飛行機も大きな板を空中に広げて膨大な抵抗を作り、機体を急速に減速する機能を持っています。F-15の場合はコックピット後方の胴体の上に、畳ほどの大きさの巨大な板を立ち上げます。

高速道路を時速100キロで走っている車に上に畳を立てるイメージをしてみてください。並大抵の力では支えられませんよね? 時速2,500キロほどで飛んでいる飛行機の上に同じ大きさの板を立ち上げるのは、力学的にも構造的にもかなりの無理を強いることになります。
なのでF-15では、超高速飛行時にはスピードブレーキが大きくは開きません。実際は僅かに開く程度です。
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