第5回[後半] 原型機から空軍への引き渡しまでとF-35との関係──J-20の開発(3)

第5回は前後編となっているので、「第5回[前半] 成都J-20──(5)初飛行後に検証機はどう変わっていったか」をまだお読みになっていなければ、まずそちらを読んでいただきたい。

J-20の開発機には大きく3つの段階があり、前回は第一段階の検証機について紹介した。

今回は第二段階の原型機がどのように変わっていき、どのような空軍部隊に配属されていったかに焦点を当てたい。そしてそれに加え、開発におけるJ-20とF-35の関係についても少し紹介したい。

3.工程研究段階〜4.設計確定段階における試験飛行──2011−2021番機(欠番あり)

2014年に入り、J-20のロールアウトのペースは上がっていく。立て続けに4機のJ-20がロールアウトし、2015年にもさらに2機が確認された。これらの機体は、検証機とは違う「201X」番台の機番を付与されており、いずれも工程研究段階以後の原型機と推定されている。

 

これらJ-20の原型機は、成都において製造された後、速やかに西安閻良に移動して試験飛行に従事した。

原型機による試験は、実用機としての「詰め」を行なうことが目的であるため、検証機による試験飛行とは異なり、実用機として必要なセンサーやデータリンク、CMD(Counter Measurement Dispenser:チャフ/フレア射出機)などの各種装備を搭載した状態で試験飛行を行なっている。

また、原型機においては、LERX1の大型化やインテークおよびテールブーム2の形状の変化などが見受けられ、検証機による試験結果を受けて空力的な改善が行なわれたことが窺える。

J-20の原型機である2011番機。さきほどの2001番機などと比べると、垂直尾翼の先の角が削られているのが分かる(Photo:Chinese Internet via 东兴证券研究所)

シンガポールの軍事研究科がTwitterで紹介した、2015年9月18日に初飛行を行なった2016番機(Alert5氏のTwitter投稿へのリンク。右上のTwitterアイコンをクリックするとリンク先へ移動できます)

カナード端は角をとるような整形が加えられているほか、動翼のアクチュエーター格納用と思われるフェアリング3の角度も変化している。これらはステルス性向上を意識した改善と思われる。

検証機では黒のベタ塗りに近かった塗装も、原型機においてはF-22やF-35に類似した鈍いメタリック調の灰色塗装となっている。さらにレドームや翼前縁や突出部は、縁取りをしたようにさらに色が異なっている。これはステルス塗料の採用に関連したものであろう。

脚注

  1. LERX……主翼の付け根の前縁を前方に延ばした部分
  2. テールブーム……垂直尾翼の取り付け部から、空力処理と赤外線ステルス対策のために機体下面へ延長している部分(下の2011番機の写真だと、垂直尾翼とは逆に機体下面に突き出ている部分)
  3. 動翼のアクチュエーター格納用と思われるフェアリング……各翼後縁下面の動翼の境目にある涙滴型のコブのこと

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薗田浩毅元自衛隊情報専門官、軍事ライター、ネイリスト
(そのだ・ひろき)
1987年4月、航空自衛隊へ入隊(新隊員。現在の自衛官候補生)。所要の教育訓練の後、美保通信所等で勤務。 3等空曹へ昇任後、陸上自衛隊調査学校(現小平学校)に入校し、中国語を習得。
1997年に幹部候補生となり、幹部任官後は電子飛行測定隊にてYS-11EB型機のクルーや、防衛省情報本部にて情報専門官を務める。その他、空自作戦情報隊、航空支援集団司令部、西部および中部航空方面隊司令部にて勤務。2018年、退官。