これまでの知られていた無人機の多くは高価・高性能なアメリカ製のものが多く、任務も偵察や人間の遠隔操作による攻撃に限られていた。しかし今回は、上空を徘徊し敵を見つけて自爆攻撃を行なう「神風ドローン」さえも登場している。
一体どのようなドローンが、どのように運用されているのだろうか。本稿では両軍の実態に注目してみたい。
無人機に頼らざるを得なかった両軍の空軍力
ドローン、中でも大型固定翼のUAV(Unmanned Aerial Vehicle=無人機)を使った戦闘というと、超大国がテロ組織の幹部を謀殺するなど、不正規戦争の中で特殊作戦の一環としてMQ-1プレデターやMQ-9リーパーが使われ、ヘルファイアミサイルなどが発射されることは珍しくない。

しかし、9月27日に南コーカサス地方のアルメニアとアゼルバイジャンの間で勃発した旧ナゴルノ・カラバフ自治州をめぐる地域紛争は、正規軍同士が戦火を交え、その中でUAVが使用された初の「ドローン戦争」であった。
ナゴルノ・カラバフはアルメニア、アゼルバイジャン、イランに国境を接する地域で、アルメニア系住民が多く居住していたが、アゼルバイジャンが支配しており、旧ソ連時代からアルメニアとの統合を求める声が多くあった。ソ連邦の崩壊を受けて1991年9月にナゴルノ・カラバフ自治州は独立、アルツァフ(ナゴルノ・カラバフ)共和国となった。

以後、何度となくアルメニア/アルツァフ対アゼルバイジャンの紛争が起きており、今回の紛争は南部を制圧しているアゼルバイジャンが戦端を開いたとされる。初日の戦闘でアゼルバイジャン軍の無人機がアルメニア側の弾薬庫を攻撃したとも報じられており、緒戦から「ドローン戦争」の様相を呈していた。
アルメニア、アゼルバイジャンとも空軍力はパッとしたものはなく、アルメニア空軍はスホーイSu-25フロッグフット攻撃機10機、ミルMi-24ハインド攻撃ヘリ15機が主な作戦機。
この紛争は南コーカサス地方での影響力を高めたいロシアとトルコの代理戦争的な部分もあって、アルメニア/アルツァフにはロシアが兵器供与を行なっている。その一環として、老朽化したSu-25を代替する目的でスホーイSu-30SMフランカーの供与を行なっているようだ。
一方のアゼルバイジャン空軍だが、こちらもMiG-21フィッシュベッド戦闘機5機、MiG-29フルクラム戦闘機12機、Su-25 12機、Mi-24 17機と大同小異で、本格的な航空戦を繰り返せばあっという間に姿を消す規模だ。そこで、双方とも有人機の減耗を最小限に抑えるため、ドローン戦争をせざるを得ない事情がある。
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