第3回 両目を開けて照準できる──アルディス式筒形照準器

いかにFCSは生まれたか

円環式照準器の致命的な二つの問題点

測距用レーダーが登場する以前の照準器には、見るだけで「照準」がつけられ、同時に「測距(目標までの距離が測れる)」の機能が求められていました。
それに応えて最初に登場したのが第2回で見た円環式照準器でしたが、単純な構造だけにいろいろ問題があったのです。

それは、一つは照準が大変なことです。
2点を結ぶ位置から敵機を見ないと照準が付けられないので、片目をつぶって照準器の後ろに頭を固定する必要がありました。
これを空戦中ずっと維持するのも大変なうえに、片目をつぶって前に集中している以上、周囲の警戒は全くできません。よって、最も危険な空戦中に、完全に無防備な状態に置かれてしまいます。

さらにもう一つには、人間の目のピントの問題がありました。
200メートル以上離れた位置にいる敵機と目の前にある照準器の両者に、同時にピントを合わせることは人間の目には不可能です。これは、目の前20センチくらいの場所に指を置いて見つめると、遠くのモノはぼやけてしまうのと同じ原理です。

こうなるとそもそもまともな照準は不可能ですから、どうしても誤差が大きくなるのを避けられません。

[図1]アメリカではおなじみのM2 12.7ミリ機関銃に付けられていた円環式照準器(Photo:U.S. Air force Museum)

[図1]は第2回で紹介したB-17側部銃座の円環式照準器ですが、カメラのレンズでもこのように手前にある円環(A)にピントを合わせると、銃身の先にある棒(B)がボケてしまっています。
敵機(C)に至ってはさらに先に居るのですから、これら3つを同時にピントを合わせるのは不可能です。

最低限の対策として、照準器の取り付け位置をパイロットよりずっと前方に置かざるを得ず、その結果、さらに照準をつけるのがやっかいになっていきます。

円環式の2つの問題を解決したアルディス式筒形照準器

そこでこの円環式照準器が抱える問題を解決するため、第一次世界大戦中のイギリスで登場したのが「アルディス式筒形照準器(Aldis gun sight)」です。
後に日本にもドイツ経由でこのタイプの照準器がもたらされ、照準眼鏡などと呼ばれていました。

これは1915年にイギリスのアルディス兄弟社が平行光レンズ(Collimator lens)を利用して開発したもので、1917年頃にはイギリスの主力照準器となっています。
ただし、以後も金属製の円環式照準器は併用されつづけることが多かったのですが、その理由は後で述べますね。

とりあえず今回は、平行光レンズを初めて持ち込んで、照準器の大きな進化となったこのアルディス式を少し詳しく見ていきます。

夕撃旅団・著
『アメリカ空軍史から見た F-22への道』 上下巻

究極の制空戦闘機F-22は、どのように生み出されたのか。その背景を、アメリカ空軍の成り立ちまで遡って考察していく1冊

2件のコメント

全ての回を楽しく拝見させて頂いています!
実際に覗き込んで見える様子や種類について、自ら調べるには相当な知識を要する為、今後も様々なものを紹介して頂けると嬉しいです。
応援しています!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ABOUT US

夕撃旅団ウェブサイト管理人
(ゆうげきりょだん)
管理人アナーキャが主催するウェブサイト。興味が向いた事柄を可能な限り徹底的に調べ上げて掲載している。
著書に『ドイツ電撃戦に学ぶ OODAループ「超」入門』『アメリカ空軍史から見た F-22への道』上下巻(共にパンダ・パブリッシング)がある。