航空機用照準器に求められる二つの機能──照準と測距
第1回では、機体各部に積まれた機銃&機関砲の弾道をコクピット正面に向けて集中させる工夫を見ました。
この弾道の集中によって、コクピットにある一つの照準器で、すべての銃の照準ができることになります。
では、実際の航空機用照準器にはどういった機能が求められるのかを考えてみます。
一つは当然、弾道の集中点に敵機を捉えられることです。まず照準と聞いて思い浮かぶのはこれでしょう。
もう一つは、相手までの距離を可能な限り正確に知ることです。
第1回で見たように、弾道の集中点を超えると弾丸は重力によってどんどん落下してゆくため、その手前の距離で敵機を捉えないと命中しません。つまり、この距離が“事実上の有効射程”となります。
このため相手までの距離を知るということは、空中戦では極めて重要になってくるのです。
この「①狙いをつける=照準」「②距離を測る=測距(そっきょ)」という二大機能が航空機の照準器に求められる基本要素で、この点はのちに機銃がロケット弾やヴァルカン砲になり、さらには誘導ミサイルになっても変わらない原則となっています。
円環式照準器の狙いの付け方[照準]
これから照準器の進化を見ていきたいと思いますが、まず最初は、最も原始的な照準器である「円環式照準器」です。[図1]
手前の円環の中心に孔(あな)があるのが分かるでしょうか。照準をつける際は、その孔の中(A)に、銃身先端の棒先の球(B)が入って見えるようにし、敵機(C)に向けます(つまり、A-B-Cを一直線にする)。
2点を通る直線は1本しか存在しないため、その延長線(A-Bの延長線)を弾道(A-C)と重なるようにすることで照準とするだけ、という単純明快な装置です。
よって、円環式の照準の原理は極めて単純と考えていいと思います。
ちなみに、これはB-17爆撃機の側部銃座の機銃なので、単体用の照準になっていますが、複数の銃の場合でも第1回で見たような弾道の集中調整さえ行なえば、問題なく照準の原理は使えます。
ついでにドイツへの本格的な爆撃が始まった1943年頃でも、爆撃機の側部銃座や艦上爆撃機・艦上攻撃機の後部銃座といった場所では第一次世界大戦の頃ですら旧式になりつつあった円環式照準器が使われていました。
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