
今回はなぜ成都案が採用されて瀋陽案は敗れたのか、技術面からみてJ-20はどのような戦闘機なのかを見ていく。
瀋陽案はなぜ敗れたのか
瀋陽案は、これまでさまざまな想像図がウェブに流布されてきたが、先日中国中央テレビの映像において当時のものとおぼしき風洞模型が公開されたほか、瀋陽航空機に関連した報道などにもその姿が露出するようになり、おぼろげながらその形状が明らかになった。

風洞模型などで確認されている瀋陽の案は、通常の主翼と水平尾翼に前尾翼を加えたものであり、前項の「内部資料」画像の上から3番目が該当する。機動性などにかかる点では極めて高い評価を得ていることが窺えるものの、成都案に敗れてしまった。

その胴体はかなり細く、インテーク(空気取入れ口)は当初F-22と同じく、機体との間に隙間を有する矩形(くけい。長方形)のCaret型であった。全体の形状は、スホーイSu-27フランカーの艦載型であるSu-33の影響を受けているようにも見える。
これは高速を狙ったと思われるものであったが、一次審査後にDSIインテーク(F-35などと同様の、インテーク内側にこぶ状の突起をもつもの)に変更されたと言われている。

なお、Caret型インテークとは、F/A-18E/FスーパーホーネットやF-22に見られる固定式の矩形インテークを指す。
F-15などに見られる二次元可変ランプ付インテークは、可変ランプ(中の板が傾く)により速度に合わせて空気流量を積極的に制御し、より良い高速性能を追求していた。


両者に共通しているのは、インテークと胴体の境目に隙間をおき、境界層(機体表面近くに存在する低速の空気の流れ。吸入するとエンジン効率に悪影響を及ぼす)を逃がす効果を得る。高速発揮に向いているものの、構造がやや複雑で、重量が重くなってしまうのが難点であった。
一方、DSIインテークは、入り口付近のコブによって境界層を圧縮して押しのける仕組み。高速性能の発揮にはやや不利とされるものの、単純な構造のため軽量となる。また、コブにより電波反射率が高いエンジン前面を隠すことができるため、ステルス性も高くなる利点がある。

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